March 27, 2024

セイノー、業界横断で連携、グリーン物流実現へ

Maiko Muraoka Contributing writer
Translator: Tomoko Kaichi

物流データをデジタルプラットフォームでつなぐ「チーム・グリーン・ロジスティクス」 | セイノーHD

岐阜県に本社を置くセイノーホールディングス株式会社は90年以上の歴史を持つ物流・ロジスティクスの大手だ。同社は2023年6月、業界や企業の垣根を超えて協業する「オープン・パブリック・プラットフォーム」の概念を基盤とする「チーム・グリーン・ロジスティクス(Team Green Logistics)」を長期ビジョンに掲げ、環境に配慮した取り組みの強化を表明した。

子会社の西濃運輸株式会社は日本有数の物流会社であり、持続可能性の追求で業界をリードしてきた。二酸化炭素(CO2)排出量の削減を狙ったトラック輸送から鉄道や船舶による輸送へのシフト、「ダブル連結トラック」の導入、省エネにつながる運転スキルの促進、ディーゼルトラックから電気自動車(EV)トラックへの切り替え、全国57のビジネスセンター(都市型集配拠点)から近隣の顧客への専用カートを用いた集荷と配達などはその例だ。ウェブサイトには顧客が運賃と推定CO2排出量を計算できる仕組みを取り入れた。省エネと人手不足対策のため、同業他社とも協力する。

トラック運転手の時間外労働を年960時間に制限する新規制が4月から適用されるのにともない、人手不足による物流停滞などが懸念される「2024年問題」に対応するため、2023年10月には新たな施策に着手した。大阪に開設した「輸送の中継拠点」がそれだ。

トラック運転手の長時間労働は、心身の健康だけでなく交通安全にも影響する差し迫った労働問題の一つと認識されている。しかし、残業の上限規制は一部運転手にとっては収入減に直結し、結果的に離職が増えたり、若者の運送業界への就職を遠ざけたりする事態にもなりかねない。電子商取引(EC)市場の成長が続く中、物流業界の輸送力は低下する可能性がある。

西濃運輸は想定される問題への一つの解として、北大阪支店を中継専門店に刷新した。大阪以東から九州に運ぶ荷物をまとめて引き継ぎ輸送の効率化を図ることで、輸送力を年間6万7200トン増やせると試算した。

東京と大阪を結ぶルートの真ん中に位置し、日本貨物鉄道株式会社の大阪貨物ターミナル駅にも近い北大阪支店はもともと、九州と日本各地をつなぐハブとして、また大阪府北部への配送拠点として使われてきた。

中継拠点化にともない、従来の集配業務を近隣の豊中・摂津両支店に移管。九州方面への輸送業務に特化することで、旧北大阪支店の九州への輸送力を1日700トンに増強した。

ダブル連結トラック | セイノーHD

中継拠点では、2024年問題に直面する同業他社の荷物の持ち込みにも応じている。九州まで同じルートを両社がトラックを走らせる代わりに、西濃運輸が他社の荷物も一括してトラックと鉄道で運ぶ。九州にある中継拠点で荷物を仕分けし、最終目的地にトラックで配達する。

誰が集荷したかに関係なく同じ地域に向かう荷物を一カ所に集め、トラックの積載効率も最大限に高めることができれば、輸送に必要な車両と運転手の数が減り、CO2排出量の削減と労働力不足の緩和も可能になる。企業の垣根を超えて連携するオープン・パブリック・プラットフォームの概念に基づきチーム・グリーン・ロジスティクスを実現するという、セイノーHDのビジョンを具現化した一例といえる。

中継拠点開設の背景には、同業他社と協力して省エネと人材活用の効率化を目指してきた西濃運輸の歴史の積み重ねがあった。

2018年、同社は日本フレートライナー株式会社、日本貨物鉄道、仙台臨海鉄道株式会社の鉄道貨物3社と協業し、仙台と大阪府吹田市間で長距離直行貨物列車の毎日1往復の運行を開始した。1日に大型トラック60台分の荷物を運び、CO2排出量の推定年間1万3810トンの削減に成功したという。

2021年には名古屋と福岡間、東京と広島県東福山間の鉄道輸送でも提携。西濃運輸のトラックで貨物駅に持ち込んだ荷物を日本フレートライナーが貨物列車に積載し、日本貨物鉄道が直行輸送する。この2ルートの貨物列車運行により、推定年間1万3805トンのCO2排出量を削減した。

セイノーHDは、より良く、より環境に優しくあろうとするグループ各社の試みを通じ、持続可能性の達成に向け、運送業界をあげた取り組みに引き続き力を入れる考えだ。


セイノーHDはジャパンタイムズと共同で持続可能社会の実現に向けた日本の取り組みを発信する企業グループ「Sustainable Japan Network」の会員です。ネットワークへの参加や活動詳細はウェブサイト(https://sustainable.japantimes.com/sjnetwork-jp)をご覧ください。

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