April 10, 2023
NTT、ビジュアルデータ活用で都市や森林の問題を解決
持続可能な地域開発において、データは重要な要素のひとつだ。「サステナブル・スマートシティ・パートナー・プログラム(Sustainable Smart City Partner Program、以下SSPP)では、地域の魅力の可視化や課題解決にデータを活用するプロジェクトを全国の都市で実施している」。日本電信電話株式会社(NTT)の新ビジネス推進室スマートシティ担当課長の大成洋二朗氏は、The Japan Timesの最近のオンラインインタビューにこう答えた。データは効果的に活用されてこそ、その真価を発揮する。
SSPPはNTTが2020年に開始した取り組みであり、任意の都市についてさまざまなデータを収集し、その魅力を最大化し弱点を補う方法を導き出すための一連のツールでもある。
熊本県合志市は2022年12月、株式会社NTTドコモ九州支社、NTTコミュニケーションズ株式会社、同県に本社を置く情報技術会社の株式会社クロスカルチャーと地域社会の発展に向けたICT活用で連携協定を締結した。NTTがSSPPの取り組みの一環として提供する「Sugatami」を使い、同市の魅力を見える化し、地域の特色を生かしたまちづくりを進めることを目的のひとつに盛り込んだ。
Sugatamiは、まちの現状をマクロに分析し、まちの「いま」を映す鏡となることを意図するが、地域を可視化し、改善やイノベーションに向けて自治体の行動を促すにはミクロな視点のアプローチも必要だ。
愛知県岡崎市で今年1月にスタートした産学官連携の「森林経営健全化プロジェクト」は、地域資源の有効活用を掲げてデータを活用する取り組みの一例だ。西日本電信電話株式会社や株式会社NTTデータが参画し、二酸化炭素(CO2)吸収量などを考慮した森林経営の健全化をデジタル技術でサポートする。
森林管理は現地調査など多くのプロセスにおいて人手が必要で、コストがかかるだけでなく人材不足が続いている。これらを踏まえ、このプロジェクトでは衛星画像データを利用する世界初の高精細3D地図の「AW3D」を導入し、森林経営の効率化と、森林面積に応じたカーボンクレジット発行の可能性を検証する。
この技術を使えば、木の本数や密度、高さ、樹種など詳細なデータをもとに森林の全体像を把握できるだけでなく、CO2吸収源として認められず、カーボンクレジットが発行されない放置林がどの程度広がっているかを確認できる。それにより、CO2吸収能力をより早く、より簡便に、より透明性の高い形で評価し、カーボンクレジット創出源として森林に新たな価値を与えることが可能になる。
「森林の適切な計測データは、将来的にカーボンクレジットの発行に役立ち、木材の適正利用を推進する信頼できる基礎データとなる。このプロジェクトが、日本の大切な資産の維持と活用において新たな可能性を切り開くことに期待する」と大成氏は話す。
「LOGIO」も、まちづくりやビジネス、マーケティング目的のためにデータを取得して活用する取り組みのひとつだ。NTTドコモ契約者の携帯電話の位置情報とNTTタウンページ株式会社のスポット情報を掛け合わせ、詳細で高精度なペルソナ分析を行うウェブベースのサービスで、いずれの情報も国内最大級の規模を誇る。
統計データが示す趣味嗜好や行動の類似性からユーザーを任意のグループに分類し、グループごとに行動パターンの把握を試みる。例えば20代の美術愛好家の場合。「あるエリアを訪れる目的は何なのか」「現地で何をするのか」「次にどこに行くのか」などの問いに、LOGIOは情報を提供する。
LOGIOの特徴は、人の流れや集中を明らかにするだけでなく、グループごとに特定のエリアでの動きや行動を詳細に把握できることであり、地域の特性や魅力をより正確に、かつ詳細に理解する新たな方法となることが見込まれる。「地域が持つ多様性を認識し、まちづくりに有効活用することが可能になる」と大成氏は期待する。
NTTは、ジャパンタイムズと協力し、持続可能社会の実現に向けた日本の取り組みを発信する企業と自治体のグループ「Sustainable Japan Network」の会員です。ネットワークの活動詳細や入会問い合わせについては次のURLをご覧ください。
https://sustainable.japantimes.com/sjnetwork-jp