苦労の末に開業した食堂、郷土の味に特化(SYOKU-YABO 眞中やす氏)

October 09, 2019

Yasu Manaka of Syoku-Yabo speaks about his efforts at the 10th Satoyama Cafe on July 16 in Tokyo. | YOSHIAKI MIURA

神奈川県横須賀市にある大楠山の麓で、かつて耕作を放棄された田んぼだった場所に、一人の男性の野望が形になっている。ここは、農園で採れたばかりの食材の提供と伝統の維持を目指しているレストランだ。

三浦半島にある、眞中やす氏のこのレストランでは、同じ敷地にある畑で育てた野菜と日本各地の調味料を使った料理を提供している。

眞中氏は、ここを SYOKU-YABO と名付けた。これは「食」と「野望」を組み合わせた名前で、日本中の郷土料理の豊かさを守り、広めていくという彼の目標を表している。

都内で7月16日に開催された「第10回 Satoyama カフェ」で、眞中氏は自らの考えや事業について語った。この催しは、Japan Times Satoyama 推進コンソーシアム、ガイアックスとおうえんフェスにより設立された「地域おうえん BASH」の共催で行われた。

1969年生まれの眞中氏は、アメリカの音楽学校を卒業した後、旅をしたり、ごみ収集やバキュームカーの運転手など、人がやりたがらないような仕事をしたりして、20代を過ごした。

日本各地への旅を通して、見たことも食べたこともないような郷土料理との出合いなど、眞中氏にとって多くの発見があった。

「海外に住んだり、外国を旅したりした経験があったからこそ、そういったものに価値を見いだせたんだと思います」と、眞中氏は述べた。そして、他にない、守るべきものを掘り起こすには、外部の目線が重要であることを強調した。

眞中氏は30代のときには、ロックミュージシャンをしながら、音楽のプロデュースや編曲などを手がけた。同時に、出版物のために旅をして、地方の食べ物や調味料を研究するというコーディネーターとしても活躍した。この経験を通じ、食文化への熱意はさらに増していった。

38歳のとき、眞中氏は開発会社にいた友人から、森に囲まれた耕作放棄水田があるのだが、誰か農業をやりたい人を知らないかと尋ねられた。

その開発会社は元々、この土地を埋め立てて開発する予定だったが、建設に使われる大型トラックが近隣の道を往来することに、地域住民が猛反発をしたため、断念せざるを得ず、その結果、この土地は15年間にもわたり放置されてきた。

眞中氏は、この土地こそが自分の熱意を現実にするために必要なものだと思い、2009年に開墾をスタートさせた。

ところが、その敷地内にレストランを建設しようと計画を始めたとき、大問題に直面する。この土地には、新しく建物を建てるにあたって厳しい規制がかかっていたのだ。

「移動販売車を動かさずに使うことで、何とかすりぬけようと考えました」と、眞中氏は話した。それでも、まだまだ多くの規制に悩まされた。

地元の役所の人たちや横須賀前市長の助けを得て、一つずつ問題を解決していった眞中氏は、まず農業生産法人としての登記から取り組むことになった。

「これが、それはそれは大変な作業だったんです」と、眞中氏は振り返った。そして、「登記の受付担当の省庁関係者など、皆さんのサポートを得るために、自分の言いたいことはきちんと伝え続けつつ、相手の言うことにも耳を傾けました」と述べた。

その後、いわゆる六次産業の推進に寄与する事業者として農水省の認証を受けるために、申請を出した。この認証の目的は、生産するだけでなく、加工し、直接消費者に向けて販売することで、地産地消を実現する一次産業従事者を支援することだ。この認証のおかげで、規制のいくつかが緩和され、眞中氏にとって、建物の建設が可能となった。

道路や下水道の改良など、まだまだ課題はあったが、眞中氏のやろうとしていることに価値や可能性を見いだした人たちの支えがあり、クリアしていくことができた。眞中氏は、正直さと敬意に基づいた人間関係を築くことが鍵だと、考えている。

さまざまな法的基準を満たすための大規模な開発と工事を経て、2010年から移動販売車で営業していた SYOKU-YABO は、2014年に農園の隣に建設された建物内で再オープンした。このおかげで、来園した人たちは、さわやかな自然を楽しみながら、収穫したての野菜と、日本中から集めた豊富なレシピを十分に楽しむことができる。

「みそ汁だけでも、34種類の中からみそを選ぶことができるんですよ」と、眞中氏は話した。

眞中氏は現在、音楽やアートのイベント、母親や子供向けの食育プログラム、そして自然の中での結婚式など、さまざまなプロジェクトを通じて、より多くの人たちにこの場所を知ってもらえるよう、発信を続けている。

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