October 06, 2023

【NRI】新指標GDP+iから見える日本人の生活満足度とその潜在力

Hiroko Nakata Contributing writer

A chart showing the economic evaluation based on GDP+i | NRI

従来の経済指標は日本経済が長期間に渡り低迷していることを示している。しかし野村総合研究所(NRI)によると、異なるアプローチ分析でわかるのは、日本人は世界のデジタル化により生活満足度が高まり、それは将来的な経済力に繋がるかもしれないということだ。

「国内総生産(GDP)からは見えないが、日本人はデジタル化によって利便性や生活満足度を享受している。それをGDP+iで補足しましょうというのがこのプロジェクトの発端です」と同研究所未来創発センターの森健デジタル社会研究室長は話す。

GDPは国内で生産された商品やサービスの付加価値の合計額を示す経済指標だ。一方、GDP+iは同研究所が提案する新たな経済指標で、GDPとデジタルサービスへの満足度の推計値を統合した指標だ。現在、同研究所ではその推計値として「消費者余剰」を採用している。これは消費者が支払ってもよいと考える最大値と実際の価格の差異を示す。

GDP+iはグラフで表すと、横軸がGDPを示し、縦軸が消費者余剰等の主観的な指標を示すと森は説明する。GDPの拡大は、ある一定水準までは国民の生活満足度と正の相関関係を表す。しかし、その数値を越えるとGDPの成長のみでは生活満足度を大きく上昇させることはできない。「そこで縦軸の向上に寄与できるのがデジタル技術である」と同研究所は今年4月のレポートで指摘する。

野村総合研究所がGDP+iを発案したのは、コロナ禍が猛威を振るった際、GDPが経済社会状況を適切に反映していないことを認識したからだ。

野村総合研究所 未来創発センター デジタル社会研究室 室長 森 健 | NRI

過去10年間、日本のGDPは520兆円から550兆円程度に停滞していた。1980年代後半から1990年代初めに発生したバブル経済が崩壊し、経済が長期低迷に陥ったためだった。2020年には新型コロナウイルス感染症の拡大により世界のサプライチェーンが寸断され、生産物流ラインに支障をきたした。これによりGDPは前年比4.5%の減少を示した。

そのような経済状況にも関わらず、消費者余剰は同年15.2%増の263兆円を示し、日本の経済低迷期にも同指標は安定的な上昇を示したと森は指摘する。その理由として、コロナ禍では多くの企業がデジタルサービスを業務に導入し、従業員は長時間におよぶ苦痛な通勤時間から解消され、日本人がより生活満足感を得たのが理由だと言う。

デジタルサービスが日本人の生活に影響を与えたことは、別の調査においても見て取れる。2022年8月に同研究所が行った調査では、日本人の65%がインターネットの普及に対して「生活に利便性・快適さをもたらす」と回答し、調査対象8カ国のうち最大値を示した。一方、日本人は生活満足度と生活の自由度に対して、平均スコアが8カ国中で最低値だった。同調査は15歳から69歳の男女を対象に行われ、回答数は日本が9,400、米国・英国・ドイツ・イタリア・ポーランド・スウェーデン・スイス各国が1,000だった。

コロナ禍以前にも、10年以上前にスマートフォンが発売された際、人々はすでにデジタル化の恩恵を感じていたことを調査は示していると森は指摘する。3年ごとに行われる同研究所の調査で、日本人の生活満足度が68%(2009年)から73%(2012年)に上昇し、その後も直近に78%(2021年)を示すまで徐々に改善していたことがわかる。

当初、2012年の上昇は説明がつかなかったと森は言う。つまり、当時の経済指標は景気改善の兆候を示していなかったためだ。例えば、当時のGDPは拡大しておらず、平均賃金も上昇していなかった。さらに当時は米国に端を発するサブプライムローン問題により、世界は金融危機に直面した後だった。「やはりスマホの登場が原因なのではないかと判断しました。GDP統計結果を分かりにくくしている要因として、スマホの出現は象徴的でした」と森は説明する。アップルは2007年にiPhoneを世界的に発売し、日本では2008年に発売された。

2007年のiPhoneの登場とその後の世界的な普及は、私達の生活に大きな変化をもたらしたと森は話す。しかも、影響力が大きいにもかかわらず、音声・ビデオ電話、SNS、地図、天気予報等、多くのサービスは課金サービスではない。

もし日本における消費者余剰の継続的な上昇をもとに、新たな事業を発案したり適正な価格判断によってデジタルサービスを収益化したりすれば、今後の事業機会を創出する可能性がある。さらに、日本人の生活満足度の上昇は、将来的に生産性の向上にも繋がるかもしれないと森は語る。

今後の高齢化社会を見据え、日本はデジタルインフラの整備を進めるべきだと森は強調する。デジタルインフラとは、インターネットのアプリ、自動運転システム、ドローンを利用する物流システム等を含む。道路や橋を建設する従来の社会インフラは経年劣化するが、デジタルインフラは時間の経過とともにデータが蓄積されサービスの向上に繋がる。「そういったデジタル社会資本のように、増加蓄積する社会に日本もかじを切るべきじゃないのでしょうか」と森は話す。

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