January 24, 2024

三田興産、東京都心部で不動産とコミュニティを開発

左から佐藤南帆選手、出光正道社長、田島尚輝選手 | 三田興産

不動産賃貸業を手掛ける三田興産株式会社は、東京都港区三田の慶應義塾大学東門から道を挟んですぐのオフィスビルに入居する。この辺りは邸宅が多く高級でアカデミックな雰囲気を持ちながら、地元の小さな飲食店や商店が軒を連ねる下町の顔を併せ持つ。

三田で生まれ育った出光正道氏は、地元に貢献したいという思いから3年前に会社を立ち上げた。三田を中心に物件を所有し、自身も三田に暮らす。「テナントや取引先、地元の商店主や住民の人たちとは毎日交流がある。いまも近くの蕎麦屋で昼食を食べてきたところだ」と話す。

2023年11月に竣工したMAビル三田の最大の特徴は環境にも人にも優しい設計と設備を取り入れたこと。「エレベーター1基は緊急時にストレッチャーを入れられるだけの広さを確保し、グランドフロア階にはバリアフリーのトイレを設置した。屋上庭園を設けエントランスは壁面を緑化するなど、環境とビル利用者のウェルビーイングに配慮した」と説明する。

MAビル三田は、環境省が推進する「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)」が定義する目標達成状況に応じた4段階のうちの1つ、「ゼブレディ(ZEB Ready)認証」を取得した。ZEBは建築物の一次エネルギー消費量収支をゼロにすることを目指す取り組みで、ゼブレディは、同じサイズの従来型ビルと比べてエネルギー消費量を50%削減したビルを対象とする。MAビル三田には近々、電気自動車用の急速充電器の設置が予定されている。

三田興産が所有するビルでは、風力発電など再生可能エネルギーで100%まかなう計画だ(一部非採用の物件あり)。出光氏の祖父である出光佐三氏が創業した100年以上の歴史を持つエネルギー会社、出光興産株式会社の傘下にある出光グリーンパワー株式会社が電力を供給する。同様の取り組みは、同社のほかのビルでも継続的に進められている。同社ビルには、中国、ハンガリーなど、国内外からさまざまなテナントが入居するが、出光氏は「私自身がすべてのテナント候補と面談し、どの国の会社かに関係なく地域社会のためになる会社に貸すようにしている」と話す。

11月に竣工したMAビル三田 | 三田興産

テナントとの良好な関係の維持にも熱心だ。「毎年テニス大会を主催し、テナントや不動産エージェントなど多くのステークホルダーを招待している。参加者には当社がスポンサーを務めるプロテニスプレイヤーの佐藤南帆選手や田島尚輝選手と交流してプレーする貴重な機会を楽しんでもらっている」。

佐藤選手は出光氏の母校でもある慶應義塾大学の卒業生だ。三田興産は英語で授業を行う同大の教育プログラム「Global Passport Program」と「CEMS国際経営学修士コース」にも支援を広げている。

大学時代にサウジアラビアに留学した経験のある出光氏にとって、国際交流は特別な意味を持つ。「第二の故郷であるサウジアラビアでは、世界各地から集まった学生と人対人の付き合いをした。その経験から、国際交流こそ世界平和の実現に必要なこと」だと考える。日本人学生と外国人学生には、国際的環境の中で互いに学び合ってほしいと話す。「大学がさまざまな国の学生に門戸を開いているのと同じように、三田には多くの外国人居住者や労働者が住んでいる」といい、外国人人口が地域社会の重要な一部であることを強調。三田には大使館も多く、三田興産が所有するビルの1つにはハンガリー大使館が入居している。

「地域社会の活気と魅力を保つためには、住民、企業、行政、学校、病院、地元商店街など、あらゆるステークホルダーの協力が必要だ」と出光氏。三田興産も地域社会の一員との思いから、毎年7月には「三田納涼カーニバル」を支援する。東京都済生会中央病院に観葉植物を育てるための資金を援助する「グリーンスポンサー」でもある。「緑の草木が長期入院者や頻繁に通院される方の心をいやす一助になれば」という。

最近では三田エリアの自治会に会合や活動のために使ってもらおうと、所有するビルの一室を無料で開放した。「不動産デベロッパーとしてだけでなく地域社会のアクティブなメンバーとして、地域のためにできること、人と人をつなぐことを続けていきたい」と出光氏は語った。

Subscribe to our newsletter

You can unsubscribe at any time.

PREMIUM MEMBERSHIPS

1-month plan or Annual plan 20% off!

Premium membership allows members to Advance registration for seminars and events.
And Unlimited access to Japanese versions of articles.

CHOOSE YOUR PLAN

Subscribe to our newsletter