January 07, 2025

みずほレポート:代替エネルギーへの移行を促す目的

Mizuho’s sustainability report for 2024 | Mizuho
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不確実性が高まる世界において脱炭素を目指すために日本企業が注力すべきことは、代替エネルギー分野の技術革新を進め、カーボンニュートラルエコノミーを確立するためにビジネスモデルを転換することである。今月発行したレポートの中でみずほフィナンシャルグループはこのように述べた。

12月5日に発表されたこのレポート「Mizuho Sustainability Focus 2024」は日本の将来への危機感が反映されている。日本経済は二酸化炭素(CO2)の排出が多い製造業を中心に発展してきており、一方で日本は地理的条件などから海外で普及するメガソーラー発電や洋上風力発電など一部の再生可能エネルギーの発電の普及が困難な状況にある。

「このレポートを作成したのは、将来のグランドデザインを産業界のお客様に見ていただき議論を喚起できればという想いからだった」とみずほフィナンシャルグループの角田真一サステナブルビジネス部長はインタビューで述べた。

戦後の日本は重工業の発展に支えられてきたが、今後は縮小していくことが予想されている。日本を支えてきた製造業は、より付加価値のあるIT機器の部品や高品質な化学素材などの製品により注力していく必要がある。現在、日本の製造業は国内総生産(GDP)の20%を占め、EUの15%や米国の10%よりも高い。さらに、日本経済のためには非製造業の成長は欠かせない。特に高齢化社会、インバウンド(訪日外国人)、エンターテインメント向けコンテンツに関わるサービス分野は重要になると角田氏は話す。

「製造業で強みのあるところを伸ばしていき、それだけでは持続的な成長という意味では難しいので、それ以上に経済を支えるためにサービス分野を伸ばしていく必要がある」

レポートの中では2050年の日本の電源構成も想定している。59%が再生可能エネルギー、19%が原子力、13%が水素・アンモニア等、9%がCCS火力である。直近の2022年のデータによると、22%が再生可能エネルギー、6%が原子力、31%が石炭火力、34%がガス火力、7%が石油火力だった。

角田真一 | Mizuho

「最大の難しさは、経済成長を支えるエネルギー供給をどう担保するかということだ」と角田氏は述べる。多くの産業において電化が進み、デジタルテクノロジーの技術革新により半導体製造工場やデータセンター等において電力需要が高まることが考えられるからだという。

従って、将来の技術革新が重要になってくる。今後数十年間に日本が脱炭素を達成するために最も重要なのは、水素、太陽光、風力、あるいは核融合発電のような代替エネルギーの使用を支えるための適切なサプライチェーンやインフラを企業が整備することだ。

このような想定が後押しになることで、代替エネルギーのさらなる推進が可能になると角田氏は話す。「少なくとも私が知る限りでは、本レポートのような仮説を示しているケースはあまり見られない。私たちとしてはこういった仮説で議論が盛り上がればと思っている」

脱炭素の将来に近づくには、より多くの議論の場を持つことが必要になる。なぜなら、それぞれの代替エネルギーには課題があるからだ。水素は専門家の間での評価は高いが、その生産、流通、消費を支えるしっかりとしたサプライチェーンが整備されていない。太陽光発電に関しては、山間部が多い日本の国土ではメガソーラー発電所を建設するための用地を見つけることは困難を伴う。例えば、薄く曲げることが可能なペロブスカイト太陽電池のような次世代技術が突破口となれば、より多くの場所で太陽光発電が可能になるかもしれない。風力発電も同じように地形上の課題がある。遠浅の海に囲まれた欧州沿岸で見みられるような着床式の洋上風力発電は、日本には難しいかもしれない。従って、より技術的には難しい浮体式の風力発電の開発を進める必要がある。また、世界では核融合発電のような革新的な技術が注目されているが、実装されるためには時間がかかる。CO2も核廃棄物も排出しない核融合炉はしばしば「夢の技術」と呼ばれ、スタートアップ企業を中心に研究が進められている。みずほフィナンシャルグループは核融合技術を開発している米国スタートアップ企業Zap Energy社に今年出資を実施した。

「これらの技術はすべて商用化されていないので不確実性が高い。従って、これらの技術をしっかり推進していかないといけない」と角田氏は話す。

同時に、日本が目指さなければいけないのは再生可能エネルギーの推進だけではなく、サーキュラーエコノミーを実現することだ。サーキュラーエコノミーとは、資源を再利用・リサイクルし廃棄物を削減する資源循環を促進することだが、とくに日本は蓄電池等に欠かせないレアメタルを含む自然資源を輸入に頼っており、それらを再利用することが課題として挙げられる。

「脱炭素自体が目的になると、限界が見えてきてしまう。やはり長期的にトランジションをいかに的確なスピードで実現しつつ経済を回していくかが重要になってくる」と角田氏は述べた。

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