April 13, 2020
スキンケア商品、環境に優しいパッケージを探究
ロート製薬と聞いて、日本のほとんどの消費者は目薬を思い浮かべるはずだが、実際、ロート製薬は常に研究開発、製造の幅を広げ、健康や美の分野にも進出してきた。
医薬品の製造会社として約120年の歴史を誇るこの企業は、製品の開発や改良のため、医薬品成分の研究に多くの時間や資源を投資してきた。そんな成分の一つが、細胞を保護する役割を果たすヒアルロン酸だ。
「もともと目などの人間の臓器に良い効果をもたらす物質の研究を行っており、そこからヒアルロン酸に着目するようになったのです」とプロダクトマーケティング部のグループリーダーを務める奥野久仁子さんは語る。
「ヒアルロン酸はダメージの修復や乾燥を防ぐ目的でアイケア商品に使われています。それならば同じ効果を皮膚にも与えられるのではと思いついたのです」と奥野さん。こうして2004年に肌ラボのスキンケアシリーズが生まれた。
長い歴史を持つこの製薬会社は、表面的な美しさよりも肌の健康に焦点を当てており、肌ラボスキンケアシリーズのパッケージにもその姿勢が表れている。ラベルに書かれたメインメッセージは、この商品にはヒアルロン酸が使われているということであり、包装のデザインもしゃれてはいない。発売当初は「極潤ヒアルロン液(化粧水)のボトルを見て、化粧水というより化学物質の容器のようだとおっしゃるお客様もたくさんいらっしゃいました」と奥野さん。「でも、重要なのは、無駄をそぎ落として手頃な価格で肌に良いものを提供することです。」
6代目の極潤ヒアルロン液(化粧水)は2017年に発売された。「これには3種類のヒアルロン酸が使われています。より心地良い使用感を目指して、これらの成分の特性を配慮し、処方検討を重ねました。我々の技術の集大成です」と奥野さんは語る。
デザイン以外にも、ロート製薬はパッケージに今までにない手法を取り入れた。ヒアルロン液(化粧水)が発売されてから1年後、肌ラボの一部商品の詰め替え用をプラスチック製のパウチで販売し始めたのだ。
奥野さんによると、当時まだ詰め替え可能な化粧品というのは珍しかったという。しかし、洗剤やシャンプーなど日本の消費財市場でよく売れている詰め替え可能商品は既にあったため、こういった商品を購入することがゴミを減らすと同時に節約にもなることを消費者は分かっていた。
このおかげで、スキンケア商品も、より経済的に詰め替えできるということや、環境負荷を減らすことができるという考えが広まるのは早かったようだ。「こうして日本に詰め替え可能なスキンケア商品という新しい市場を作ることができたのですが、我々の商品が販売されている諸外国ではそう簡単にはいきませんでした」と奥野さん。肌ラボシリーズは2007年から世界各地で売られているという。
「しかし、良いことを伝えることを諦めず、なぜ良いのかを説明し続けています。いくつかの国では、普段は店頭には並びませんが、キャンペーンという形で詰め替え用を販売し、だんだんと消費者の意識を変えていこうとしています」と話す奥野さんは、売れるものではなく、「心、体、地球の健康」のために良いものを作るという会社の方針を強調した。
世界市場で売っていく際の難しさは、習慣の違いにもあり、「実際、保湿用のローションを使うということが一般的ではない国もあるのです」と奥野さんは言う。日本では、メイクを落とし、洗顔して化粧水で整えてから乳液やクリームをつける、というのが典型的なスキンケアの順序だが、国によっては「クリームだけで保湿することが多いというところもあります」と奥野さん。異文化の習慣を変えるには多大な努力が要される。「我々はこれを押し付けずにやろうとしています」そのスキンケアの方法は良くないとか不十分だとか指摘するのではなく、宣伝やキャンペーンを通じて、ヒアルロン液(化粧水)の良さを伝えようとしている。
肌ラボ商品はこれまでに、香港に始まり、アジア諸国、ロシア、ブラジルなど約20ヶ国で販売されている。
最近、肌ラボシリーズで実施された改良点は、2019年に容器、パウチの素材の一部をバイオマス由来の素材に変えたことだ。今後の目標は、消費者に不便な思いをさせることなく、容器・包装における環境に優しい素材の使用率を上げることだ。この目標を達成するには、使い勝手と耐久性を両立させることが重要だと、奥野さんは言う。
「もともと目の研究から肌の健康のためにヒアルロン酸を使うことを思いついたように、製薬会社ならではの方法でこのブランドを強化していきたいと思っています」と奥野さんは語った。