ESG投資の国際ルール作りに関与、アジアの声を代弁も

September 24, 2021

衆議院議員・自由民主党財務金融部会長
鈴木馨祐(すずきけいすけ)
1999年大蔵省入省。ジョージタウン大学外交大学院フェロー、在ニューヨーク総領事館副領事、厚生労働省出向などを経て2005年退官。同年衆議院議員。財務副大臣、外務副大臣などを歴任。衆議院財務金融委員会理事。自民党財務金融部会長。 | Hiromichi Matono

Keisuke Suzuki is a House of Representatives member and the director of the Liberal Democratic Party’s Treasury and Finance Division. | Hiromichi Matono

自由民主党の財務金融部会は3月、持続可能な社会や経済成長に向けた投融資、いわゆるサステナブルファイナンスを促すための提言を行った。企業のESG(環境・社会・企業統治)情報開示について欧州連合(EU)主導で制度インフラやルール作りが進むなか、日本国内で体系的に議論をリードし、国際舞台で日本とアジアの視点を反映させる狙いがある。提言作成を率いた鈴木馨祐衆議院議員は「今年は国際的ルール作りにおいて極めて重要な年。日本がルール形成に関与する最後のチャンスでもある」と覚悟を語る。

提言のそもそもの背景には、2008年のリーマン・ショック以降に生まれた経営の短期主義(クオータリー・キャピタリズム)への反省と、気候変動が企業の事業継続に壊滅的な影響を与えるという危機感から「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」を中心に情報開示をめぐる議論が加速したことなどがある。長期的収益を基盤として、「資本主義をある意味再定義する必要性」(鈴木氏)が叫ばれるようになっていた。

近年は金融分野の国際的な動向として、気候変動を含むESG課題への対応など、非財務情報が企業の長期的な収益や価値、事業の持続可能性の判断において極めて重要との認識が広がっている。2000年代初めに注目されたCSR(企業の社会的責任)概念が社会的貢献の意味合いで語られることが多いのに対し、企業の長期的利益、つまり将来の業績を数値化して評価するサステナブルファイナンス、あるいはESG投資は「似て非なるもの」(鈴木氏)だ。

これらを踏まえて提言では、事業の長期的な持続可能性、リスクへの感応度などを含む、非財務情報を中心とした企業の情報開示が不可欠であることを改めて確認。国際的な開示ルール策定への日本の積極的な参画を促すとともに、企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード、CGコード)において企業に開示を求めることや、将来的に開示の義務化を検討することなどを提案した。これを受けて、6月に施行された改定版CGコードには気候変動リスクと企業統治に関する記載が新たに盛り込まれた。間接金融の強い日本では、金融機関がストレステストを確実に行い、それを中央銀行がモニタリングすることが重要など、提言ではほかにも金融機関や金融監督当局、中央銀行が果たすべき役割などを整理した。

国際的ルール作りについては、鈴木氏はEUで先行する「タクソノミー」を引き合いに日本の関与が必要と考える理由を説明。タクソノミーとは、例えば環境にやさしいグリーンかどうかを経済活動ごとに定めた分類だ。投資判断の評価基準として重要な議論だが、国ごとの事情を考慮しなければ公平性を欠くという危険もはらむ。

Suzuki served as vice consul at the Consulate General of Japan in New York and worked on loan at the Ministry of Health, Labor and Welfare. He retired as a government official in 2005. | Hiromichi Matono

日本の場合、島国であり電力グリッドが一国でほぼ完結すること、またスタートアップよりも伝統的な企業が多い特性から、全体的に変化に慎重な傾向があるものの、いったん動き始めると早いなどの特徴がある。「グリーン化の進捗も、現時点、5年後、10年後では評価がまったく変わることもあり得る。政府として、時間軸を評価対象に加えるなどの働きかけをしていく必要がある」(鈴木氏)。

温暖化ガスの段階的削減を進めるトランジションファイナンス(移行金融)が最近注目を集めていることにも言及。産業的に成長途上のアジアの新興国などには必要な定義としたうえで、「日本のような先進国では(脱炭素が進まない)言い訳になりかねない」と危惧した。

消費者ニーズの多様化が急速に進む現状を踏まえ、耐久消費財を中心にした産業構造をいかに転換させるかが日本経済の課題とも指摘。「政府がやるべきことは、例えば10年後、15年後にどうありたいかを想定し、それに向けて(産業界に)移行を促すルールを作ること」「方向性を示すことで変化をリードし、適切な市場を作り、適切な投資の流れを作ることで、適切なイノベーションを引き出していく。提言では、その意識改革を促すことも意識した」(鈴木氏)。

成長の可能性があるところに人材と資金が集まることが日本の成長のカギともみる。「投資の世界も同じだが、企業が人を選ぶのではなく、人が企業を選ぶ時代に変化してきたと感じる。その意味でも企業の情報開示が必要だ」と述べ、情報開示だけでなく、雇用から働き方、給与体系にいたる企業の変化に期待した。

最後に鈴木氏は、国際会計基準を策定するIFRS財団を中心にESG情報開示の世界基準が集約していく流れに加え、主要7カ国首脳会議、20カ国・地域首脳会議が欧州で開催され、10月末からは第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)が英国で予定されることを踏まえ、欧州主導の国際ルール作りが一気に加速する可能性を予測。日本の意見を反映させることができるかどうか「今年は勝負の年になる」という。また「日本がアジア諸国のリーダー国の1つであり続けるためには、国際会議の場でアジアや太平洋の島国の声を代弁することが不可欠であり期待もされている。(ESG関連の)ルール作りにおいてもその観点を忘れず責任を果たしたい」と決意を語った。

Hiromichi Matono

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