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日本が支援、小さな島国が国際社会で大きな存在感

October 08, 2021

Joe Muntal
CONTRIBUTING WRITER

岸田文雄元外務大臣(左)とミクロネシア連邦のジョン・フリッツ駐日大使

(*2020年11月特別号掲載の記事。肩書きなどはインタビュー当時のまま記載)

気候変動や世界経済の変化の影響を最初に受けるのは、人口が少なく資源に限りがあり、貿易への依存度が高い島国だ。

岸田文雄元外務大臣はThe Japan Timesが2020年11月4日に行ったインタビューで、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は、これら島国が抱える独特の課題を浮き彫りにしたと述べ、国家間の分断が深まり、移民規制の厳格化や保護主義的政策への傾注が進んでいるとの見方を示した。

岸田氏は、「人口が限られ資源もない島国は、保護主義や自国第一主義という考え方では生きていけない」と指摘。「だからこそ、島国は外交面で協力し、環境問題をはじめ地球規模の課題への取り組みでリーダーシップをとる必要がある」と強調した。

インタビューには、西太平洋に浮かぶ何千という島々からなるヤップ、チューク、ポンペイ、コスラエの4州を擁するミクロネシア連邦のジョン・フリッツ駐日大使も参加。日本とミクロネシア両国の外交関係の重要性や、両氏がかかわった過去の案件、21世紀の課題などについて語った。

日本とミクロネシアの関係は、いまから100年以上前、当時の大日本帝国が現在のミクロネシアの大半を統治していた時代にさかのぼる。多くの日本人がミクロネシアに移住し、ミクロネシア人と結婚して家庭を築いた。いまでは人口10万4000人の2割が日系人とされ、フリッツ氏もその一人だ。

日本とミクロネシアの関係強化において重要な側面のひとつは、ミクロネシアの日系人と日本人の祖先を再び結びつけることだとフリッツ氏はいう。

「両国間の(歴史的)つながりを広く知ってもらうことは、両国の関係強化に非常に重要だ」

「非常に難しいことは承知している。若い世代は関心がないか、(祖先に日本人がいることを)知らないかのどちらかだ。だが、このつながりを広く知ってもらうことは、日本人とミクロネシア人の関係強化にとって大変重要だ」(フリッツ氏)

日本による占領の歴史があるにもかかわらず、フリッツ氏によるとミクロネシア人は日本に対して好意的で、同国の経済と教育政策には日本の影響がみてとれる。

「日本がミクロネシアを占領していたのは事実だが、我が国は教育やその他分野で島民の利益になるような積極的な政策を取り入れてきた。教育や開発を重視するこの姿勢は日本から学んだものだ。過去に戦争はあったが、ミクロネシア人は非常に親日的だ」(フリッツ氏)

外交面では両国政府は漁業を中心とした強固な貿易関係を基盤とし、ほかにもさまざまな立場から連携してきた。第二次世界大戦後は、海外での日本人戦没者の遺骨収集事業で協力。国際会議でも、両国政府はしばしば歩調を合わせてきた。

フリッツ氏は2008年に駐日大使に就任した。12年という在任期間は、通常3~4年で国に帰る大使にとって異例の長さだ。当初4年だった任期は、当時のエマニュエル・マニー・モリ政権下と、続くピーター・クリスチャン前大統領の時代に4年ずつ延期された。

ミクロネシア大統領がフリッツ氏を日本に留まらせたかったのも無理はない。東海大学の学生として1980年に初来日したフリッツ氏は、その後40年間の日本の劇的な変化の目撃者であり、日本の国と文化に精通しているからだ。

「初めて日本にきたとき、円相場は1ドル約300円だった。それから日本経済の浮き沈みを目の当たりにし、1ドル79円まで円高が進んだときも私は日本にいた。言うまでもなく、日本での生活にはすっかり慣れた」(フリッツ氏)

フリッツ氏は、他国の駐日大使とも強い関係を築いてきた。20人を超えるという日本語に流ちょうな大使たちのグループの一員であり、安倍晋三政権時代には両国のさまざまな取り組みについて直接協議もした。駐日大使らでつくるスポーツ関係の集まりもあり、フリッツ氏は外交官ゴルフ委員会のキャプテンだ。「これらの活動を通じて友情を育んできた」という。

2012年から2017年まで外務大臣を務めた岸田氏ともたびたび協力した。この間、安倍政権が外交関係の強化を推進するなど、フリッツ氏は日本政府の国際外交への取り組みが変わったことに気づいたという。岸田氏は、日本外交のこの変化を次のように語った。

「同じ島国として、われわれは環境問題にかかわる重要な役割を担っている」

「(外務大臣在任中の)5年間で、アメリカと中国との関係を大きく安定させることができた。近隣諸国との関係も変化した。特にミクロネシアについてはそうであり、日本外交の存在感を高められた」

外交関係を重視する日本の新たな姿勢は、日本と16の太平洋島嶼(しょ)国が3年ごとに集まる太平洋・島サミット(PALM)の開催にもあらわれている。1997年の第1回開催からこれにかかわるフリッツ氏によると、当初は「祝祭的」要素が強かったが、次第に気候変動など地域の環境問題に取り組む厳粛なトーンに変わっていった。

「最初はサミットで大きなテーマを取り上げるのは難しかったが、開催を重ねるうちに環境問題や気候変動、健康、平和など地域の重要な課題に取り組むようになった。率直に意見交換しながらソリューションを探すプラットフォームを確立できたことは非常に喜ばしい」(フリッツ氏)

岸田氏は2015年に福島県で開催された第7回PALMと、2017年の第3回中間閣僚会合に参加した。集まった国々の危機感や強い思いを共有したと振り返り、島嶼(しょ)国が気候変動などの問題の議論をリードし、国際舞台で声を上げていく必要性を強調した。

「同じ島国として、われわれは環境問題について非常に重要な役割を担っている」。岸田氏は続ける。「これらの問題、特に気候変動や海面上昇の脅威から私たちは大きな影響を受けている。このような困難を共有するミクロネシアは、これからも地域の安定確保の重要なパートナーであり続けるだろう」。

島国同士のこのパートナーシップは、新型コロナウイルスとの戦いにも通じるものがある。医療インフラの限界を認識したミクロネシア政府は、感染対策として2020年1月に渡航禁止措置を実施した。その結果、同国では感染例がまだ1件も報告されていない。世界がワクチン開発を待ち望む中、各国政府はワクチン分配をどうするかといった問題を検討している。

フリッツ氏は、コロナ対策で日本は近隣の島国を積極的に支援してきたと述べ、地域でのワクチンの公平な分配についても日本の指導力に期待した。「豊かな国、貧しい国の両方にワクチンが平等に行きわたることが重要だ。そのための日本の役割は大きく、ワクチンの公平分配に向け日本がリーダーシップをとることを望む」と述べた。

岸田氏もそれに同調し、国際協調が欠かせないと考えを表明。「ワクチンの公平な分配は、世界各国が協力して取り組むべき重要な国際的課題だ。日本は他国とすでに協議しているが、これは日本だけでなく国際社会全体の協力を必要とする問題だ」と述べた。

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