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発酵xAIで進む未来の食づくり。ちとせ研究所がリードする発酵研究

June 28, 2021

ライター: 塚田有那 TRANSLATION: EDAN CORKILL  EDIT: JAMES KEATING

微生物の培養環境に関する様々なデータを取得する大型培養装置。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの支援を受けて導入された。

微生物の培養環境に関する様々なデータを取得する培養装置。数日〜1週間程のサイクルで微生物を培養し、様々なセンサーから収集した温度や湿度、匂いなどのデータを解析している。
写真:井上嘉和

まだまだ謎の多い発酵の世界。これまで発酵は、つくり手の経験値、いわゆる「職人の技」を頼りとしてきたため、その仕組みはほとんど解明されてこなかった。その謎めいた発酵をAIに学習させてデータ化することで、高品質なバイオ資源の開発を進める研究事業が始まっている。国内の大学、企業、行政が集結するこのプロジェクトにおいて、事業のハブを担う「ちとせ研究所」の笠原堅氏に話を聞いた。

「いま世界各国でバイオテクノロジー開発が進んでいますが、微生物培養技術にかけて日本はトップランナーだと言われています。その背景には、日本が誇る多様な発酵文化が関係しています。一方、ワインや日本酒が年ごとに品評されるように、温度や湿度などによってバラつきがあるのも発酵の特徴のひとつと言えます。しかし、これからのバイオ資源開発に向けては、生産を安定させる必要がある。そこで微生物が育つ発酵のプロセス自体をAIに学習させ、様々なデータを解析することで、安定した生産を可能にする条件とは何かを調べています」。

こうした培養技術の研究が進めば、将来的には石油燃料に替わるエネルギーや樹脂、プラスチックなどを微生物から生産することも可能になるとされている。しかし発酵の特性をさらに生かせば、これまでの大量生産モデルとは異なる生産形態をつくれると笠原氏は語る。

笠原堅、株式会社ちとせ研究所 執行役員。バイオテクノロジー開発を進めるバイオベンチャー企業群・ちとせグループにおいて、バイオ生産マネジメント部門をリードする。
写真:井上嘉和

「ゆくゆくはバイオ由来のエネルギーやプラスチックの開発も重要だと思いますが、現状の食品生産量を担保しようとすると、結果として多くの農地が必要となります。そこで我々が着目したのが、少量多品種で高機能な発酵食品を開発することです。たとえば最近は代替肉が注目されていますが、そこにバラエティある風味を加えるフレーバーの開発が始まっています。ほかにも、タンパク質含量が多いとされる藻類を食用品にする動きもあり、藻類の培養にも発酵技術を活かす研究を進めています。大規模な生産拠点を整備することには資金面でも場所の面でも限界がありますから、生産拠点を各地に分散させ、その土地の風土にあった製品を小規模でつくり続けることが重要と考えています。元々発酵は地産地消の文化ですから、そのモデルは科学技術にも応用できるでしょう。また最近は人々の嗜好も多様化していますから、一律で大量生産を行うよりも、個々の好みに応じた製品を各地域でつくる方が世のニーズにも合っているはずです。今後、AIの解析によってより効率的な発酵技術を構築できれば、そうした循環型経済の新たなモデルを世界に提示できると考えています」。

これからのバイオエコノミーは、未来の食卓の風景を変えていく。その鍵を握るのは、日本の発酵研究かもしれない。

微生物の培養環境に関する様々なデータを取得する培養装置。数日〜1週間程のサイクルで微生物を培養し、様々なセンサーから収集した温度や湿度、匂いなどのデータを解析している。
写真:井上嘉和

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