壊れた器を洗練させる。伝統工芸「金継ぎ」が教えてくれる日本の精神文化

March 25, 2022

ライター: 春口滉平

金継ぎの対象となるのは従来の陶磁器のほか、近年は新たな漆剤の開発によってガラスの修復も可能になってきている。 | COURTESY: KINTSUGI STUDIO RIUM

壊れた器を修復し、新たな美的価値を付与する。日本で四百年以上の歴史を持つ「金継ぎ」は、器の破損部分を漆で接着し、金などの金属粉で装飾して仕上げる修復技法だ。修復と装飾が一体化した日本特有の伝統工芸として、近年再び注目を集めるようになってきている。

TIMELESS LLC.代表、プラニングディレクター。金継工房「リウム」代表。伝統工芸から最先端技術まで、必要に応じた再構築やプランニングを多く手がける。 | COURTESY: KINTSUGI STUDIO RIUM

金継ぎが文化として定着したのは16世紀頃。日本の茶道文化の普及とともに、高価な茶道具を修理する技術のひとつとして発展した。「壊れた器を修理するだけでなく、偶然できた割れ目に美しい装飾を施すことで洗練させていく技法が金継ぎなのです」。2016年に金継ぎ専門の工房「リウム」を創業した永田宙郷氏はそう語る。「壊れたものもひとつの価値として捉え、欠損した形状の偶然性にも美的価値を見出すといった、“傷を愛でる”といえる日本の精神文化が金継ぎにはあると思います」。

金継ぎが完成するまでには、まず破損した器の傷の表面に漆という植物樹脂を塗り固めたあと、漆と小麦粉と水を練った接着剤を用いて接着させる。湿度の高い環境下で1ヶ月ほど定着させ、研磨と漆の塗布を繰り返し、最後に金粉を乗せ塗膜用の漆を薄く塗る。リウムでは3人の職人が専任でこれらの作業を行っているが、近年は合成接着剤を使った簡易な方法を勧める事業者も増えているという。

その背景のひとつには、金継ぎの核をなす漆産業の衰退がある。現在の漆は中国などからの輸入が大半を占め、国産漆の使用率は5%にも満たない。だが日本における漆の歴史は古く、最古では9000年前の遺跡からも漆を使った副葬品が出土している。塗料、接着、防水や撥水など多くの特性を持つ漆は、器などの生活用具に適した素材として長く愛されてきたのだ。こうした文化と歴史を持つ国産漆の生産減少に歯止めをかけるため、文化庁は2015年から寺社など国の主要文化財の建造物の修繕にあたって、原則としてすべて国産の漆を使用するように呼びかけている。

「文化庁の呼びかけで漆の需要が一気に高まりましたが、一方で漆を採る『漆かき』という技術の担い手は減ってしまって、残るはわずか数名というのが現状です。金継ぎでは漆の使用量が少ない分、漆の文化を広く、生産者にも負荷をかけすぎずに伝えられる一手を担っていると言えるかもしれません」。

欠けて損失した部分でも、漆を用いて固めることで元の形状に復元させていく金継ぎの手法。最後の仕上げには金粉を乗せて装飾する。 | COURTESY: KINTSUGI STUDIO RIUM

金継ぎには漆を用いる高度な技術が求められる一方で、これまで金継ぎを専門とする職人の数は極めて少なかったとも永田氏は語る。

「これからのサスティナブルな暮らしには、『つくる』と『使う』以外に、『使い続ける』という第3の選択肢が改めて必要になると感じ、金継ぎ専門の工房を立ち上げました。最近では技術進化によってガラス用の漆剤も開発され、陶磁器以外に高価なワイングラスなども修復することが可能になっています。食器のブランドは世界中に存在しますが、美しく修復して使い続けるという金継ぎのような日本固有の文化をこれからもアピールしていきたいですね」。

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