古代の服作りの知恵と手仕事に、敬意を払う服作り。

August 30, 2021

ライター: 塚田有那, TRANSLATOR: TONY GONZALEZ

The 2016 Omizue performance of serving water while wearing paper garments.
PHOTO: YURIE NAGASHIMA

日本では古来より、天然の植物から繊維を紡ぎ、衣服をつくる文化が伝えられてきた。いま服の製造や流通過程での環境負荷が指摘される中で、服作りの原点に立ち返り、数百年前の繊維技術を現代に継承することはできないかと考えているファッションブランドがある。1997年の設立以来、日本の風土から生まれた衣服を探求し続け、美術や執筆など多岐にわたる活動もしている<COSMIC WONDER>だ。デザイナーの前田征紀に話を聞いた。

「私たちつくる服の、主な素材のひとつがオーガニックコットンです。しかし『オーガニックコットン』という名称を掲げる素材の中でも質はバラバラです。私たちが使うのは、国際的な第三者認証機関によって検査・証明され、紡績された原糸のみ。なおかつ遺伝子組換をされた種ではないこと、労働搾取などを行わない健全な有機農場で、自然と植物本来の力で育った原綿を用いています。また日本オーガニックコットン流通機構が定める加工基準に従い、一定の基準値以下の薬剤使用に限定して生産された生地を使っています」。

A haori kimono coat handwoven from handspun wool from sheep at farms in Hokkaido and Kyoto 撮影:仲川あい

徹底してサスティナブルな生産工程にこだわる前田は、アパレル業界の常識である春夏・秋冬という年2回の商品展開にも疑問を持ったという。

「2021年から、春夏・秋冬という括りを取り払い、1年を通してひとつのテーマでコレクションが成り立つように方針を転換しました。その結果、これまで年に2回行っていた生産過程において、重複していた工程をなくし、輸送の量を減らすことができました。こうしたブランドの姿勢自体が、いまお客さまの選択肢のひとつになりつつあります」。

Usu-ai-zome dyed clothing is made by repeated dyeing with thin indigo.
撮影:仲川あい

ほかにも<COSMIC WONDER>の商品は、インドの手織りの布や、大麻や苧麻などの自然布、また天然藍による藍染めや日本の伝統工芸である泥染め、草木染めなども取り入れている。これらの製造過程では従来の生産モデルよりも多くの時間や手間を要するが、生産数を絞り、日々さまざまな工夫を凝らして商品はつくられていると前田は語る。

「染色を施す際は、汚染水を浄水処理する染色場で行っています。またオーガニックコットンや手織りの布には染めムラや織り傷などが度々生まれますが、それらの製品を破棄するのではなく、刺繍作家の横尾香央留さんとのコラボレーションによって、丁寧に刺繍や刺し子を施し、お直しをしてお客さまに届ける工夫をしています」。

前田たちがこうした姿勢の背景には、古来日本で使われていた和紙や自然布づくり文化への、リスペクトがある。2021年に島根県立石見美術館で開催された<COSMIC WONDER>と工藝ぱんくす舎(前田征紀と工藝デザイナーの石井すみ子による美術ユニット)による展覧会「ノノ かみと布の原郷」では、日本各地の風土に根ざした自然布や紙の文化を紹介した。

「綿が普及する以前の日本では、全国どの地域にも植物から繊維を取り出し、布にする文化がありました。以前、そうした日本各地に残る自然布の歴史を調べて旅をしたとき、かつて布は非常に貴重な存在として大事にされ、布にまつわるさまざまな伝説や言い伝えがあったことを知りました。草木から繊維を紡ぐのは大変な作業で、現代の私たちが同じ工程を続けることはできません。しかし、古くから残る技術や衣服のなかに、かつての職人たちが糸を紡いだときの光景や気配を感じ取ることはできます。2021年秋に発表する新作では、国産の羊毛を刈り取り、人の手で糸を紡いで編んだ羽織をつくりました。それは、まるで古の衣が現代に現れたかのような驚きがありました。また2017年から継続して、自然布の原料である和紙と、和紙をつくるのに欠かせない「水」に着目し、小さな小屋のなかで、紙でできた布をはおり、お茶を点てるように水を飲むパフォーマンス「お水え」も行っています。こうした活動の原点には、古来の技術を用いてものづくりを続ける作家や職人への尊敬の心があります。手仕事から生まれたものは、多くの時を費やした人々の、命そのものだと思います。その気持ちを通して、これからも服をつくっていきたいです」。

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