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海洋プラスチックごみを使った作品で、環境問題を可視化する試み。

September 27, 2021

ライター:塚田有那 , TRANSLATOR: EDAN CORKILL

キャンバスにプラスチックごみの破片を貼り付けた高島マキコの絵画作品。
写真:鷲崎浩太郎

いま世界各地で海中のプラスチックゴミが問題視されている。2019年に環境省が発表した「環境・循環型社会・生物多様性白書」によれば、毎年約800万トンのプラスチックごみが海洋に流出しており、2050年には海洋中のプラスチックごみの重量が魚の重量を超えるという試算もあるという。海中のプラスチックは半永久的に分解されず、たとえ細かくなっても直径5mm以下の「マイクロプラスチック」となって海中にとどまるため、海洋生態系に大きな影響を与える可能性が懸念されている。しかし、実際にどんな種類や量のマイクロプラスチックが海中に浮遊し、具体的にどんな影響を及ぼしうるのかといった実態はまだ解明されていないのが現状だ。

こうした普段の生活では把握しにくい環境課題を、アートを媒介として社会に発信しようと試みるアーティストがいる。ロンドンのRoyal College of Artの大学院でテクノロジーを用いたアート表現を学んだ高島マキコは、現在海から回収されたプラスチックごみを使ったアート作品の制作を進めている。

高島マキコ
プロダンサーとして国内外で活躍した後、身体と空間の関係を探求するため渡英。デザイナー、エンジニア、科学者、建築家、研究者など世界各地でさまざまな分野の人々と協働し、作品を発表している。2019年より東京を拠点に活動。
写真:鷲崎浩太郎

「ダイビングをするようになってから環境問題を強く意識するようになりました。海にもぐると、海底近くにたくさんのプラスチックゴミが散らばっていることがわかるんです。どれだけきれいな海だとしても、根底には深刻な問題が広がっていることを知りました」。

日本郵船では、海洋中のプラスチックを調査・採取している。
COURTESY: NIPPON YUSEN KAISHA

海洋プラスチックごみの問題に関して、アーティストとして何か訴えることはできないかと模索するなかで、環境保全のコンサルタントである田井梨絵氏やマイクロプラスチックの研究を行う千葉工業大学の亀田豊准教授と知り合い、作品制作への助言や協力を得られるようになったという。さらに亀田准教授の研究室では日本郵船株式会社と連携し、世界マイクロプラスチック分布における大規模な海洋調査を行っていることを知った。現在、日本郵船では約750隻におよぶ自社の運行船ネットワークを活かして航海中にマイクロプラスチックの採取を進めている。亀田研究室では採取後のマイクロプラスチックのサイズや分布濃度などを調査し、今後は世界中のプラゴミマップを作成していく予定だという。そこで高島は、亀田准教授の協力のもと、航海中に採取されたプラスチック破片をキャンバスに貼り付け、上から絵具を重ね塗ることで「可視化されにくいプラスチック破片の存在」を訴える絵画作品を制作している。

「マイクロプラスチックは、日々の洗濯などからもフィルターで除去されぬまま海に流出していると言われています。それがどんな影響を与えるのかまだ解明されていませんが、何か問題が起きてから気付くのではなく、早い段階から気付きを提示できるのがアートの力だと思います。ただ、現在の表現方法はまだ手探りで、色々な実験を重ねている段階です。今後プラゴミの世界分布図がわかるようになれば、そうした世界視野のデータを元に作品をアップデートしたいと考えています。また個人的にも重要視しているのは、視覚や聴覚など、人の五感に直接訴えかけるような作品をつくること。データ上の数値だけでは自分ごととして捉えにくい情報も、作品を観る人が直感的に、かつ身体的な感覚で問題を受け止められるような作品をつくっていきたいですね」。

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