February 01, 2023

「つくばR8」、旧市街地の魅力を発掘・発信

上郷フェスティバルの様子 | つくば市

「この町には何もない」――地方で地元の人に観光名所を尋ねると、よくこんな言葉が返ってくる。茨城県つくば市が、「周辺市街地」の活性化を掲げて勉強会を初めて開催したのは2018年。参加した住民からも聞かれた言葉である。

つくば市は、35年前に複数の町村が合併して誕生した。周辺市街地とは、旧町村時代に生活の拠点として発展してきた8つの市街地を指し、現在は「つくばR8(Region8)」の通称で知られる。合併後につくば駅周辺が市の中心となり、R8地域が「周辺」になったことが、住民の「自信喪失」に拍車をかけたのかもしれない。

勉強会の開催と、それに続く周辺市街地活性化協議会の設立は、行政の支援のもと、これまで無関心だった、または当たり前と思われていた地域の資源に価値を見いだし、それを地域振興に役立てるよう住民を促すことを意図したものだ。「つくばの周辺市街地には見るものも、やることもたくさんある。よそ者の視点を持つからこそ、わかることです」。こう語るのは、R8のひとつ上郷で、上郷市街地活性化協議会の会長を務める小久保宏さんだ。

大学生に上郷のイラストマップについて説明する様子|つくば市

小久保さんは、上郷出身の68歳。早稲田大学への進学をきっかけに東京に出ると、その後は何十年も故郷を離れて暮らした。仕事で全国の百貨店やコンビニなど商業施設・サービスの企画を立ち上げ、宣伝に携わり、数年おきに各地を転々とした。その経験から、地域活動の成功への道は、地域の歴史や文化、環境を理解し、地元の人々とつながりを築くことだと考えるようになった。これは、筑波大学と茨城大学のゲスト講師として、地域振興入門コースで学生たちに送るアドバイスでもある。

故郷で自分のスキルや経験を地域振興に生かしたいと思ったとき、そのために必要なツールの半分はすでに揃っていた。上郷で生まれ育った小久保さんにとって、土地の歴史や文化、環境は慣れ親しんだものだったからだ。ただ、住民とのつながりが欠けていた。「ゴルフ会に参加し、同窓会も企画した。人間関係を築くには、楽しいイベントが一番」。こうした活動を通して再会した人や初めて出会った人たちが、協議会の会員になり、一緒に楽しみながら活動している。

地域のイベントやプロジェクトには迷わず参加する。そのひとつがまちづくり勉強会だ。「(地域活性化のための)色々なアイデアを話し合い、最初のプロジェクトとして上郷のイラストマップを作ることにした」。

新聞紙面よりも大きな地図は、神社仏閣、城跡などの史跡、小貝川にかかる風情ある福雷橋、釣り堀や「筑波山地域ジオパーク」の見どころであるジオサイトのひとつに指定された水辺の川口公園といったレジャースポットなど、地域の魅力を描いたカラフルなイラストで埋め尽くされた。「上郷には何もない」。そうこぼしていた勉強会の参加者たちは、地図づくりを通し、上郷には何でもあることに気づいた。「この地図は、地元母校の小学校の英語の授業で、子供たちが故郷を学ぶために使われている」。

地域活性化成功のもうひとつのカギは、若者を巻き込むことだ。この種の地域の集まりは高齢者ばかりになりがちだが、上郷の協議会員は若者から高齢者まで幅広い。しかし、若者を勧誘する必要はなかった。「面白いことをやり、それをうまくアピールしていれば、年齢に関係なく人は自然に集まってくる」。

特に祭りは人を魅了し、人を引き寄せる。そこで、協議会では昔ながらの祭りを復活させ、新しい祭りも企画している。2021年と2022年秋に開催した上郷フェスティバルはそのひとつ。2022年には2,500人以上が来場し、音楽や踊り、屋台の食べ物を楽しみ、地元の特産品や手作りの品を買い求めた。

上郷以外の7つのR8地域でも住民による協議会やグループが設立されており、つくば市から支援を受け、地域の活性化や魅力の発信に取り組んでいる。

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