April 21, 2023

広島、歴史と文化の三都巡り。竹原/古い町並みと“ウサギの島”を巡る。

ライター:池 輝子

竹原/古い町並みと”ウサギの島”を巡る。

国の重要伝統的建造物群保存地区にも選定されている竹原の街並み。
©VMG HOTELS & UNIQUE VENUES

竹原は、“安芸の小京都”と呼ばれ、国の重要伝統的建造物群保存地区にも選定されている古い町並みが残る街だ。古くは平安時代(794年~12世紀初頭)に京都・下賀茂神社の荘園として栄え、室町時代(1336~1573年)には、竹原の港は瀬戸内海交通の要衝として知られていた。

そのような長い歴史を持つこの街が最も発展を遂げたのは1650年に開発された塩田がきっかけだった。生産された塩は竹原の港から日本全国へと運ばれ、帰りには船に米などを載せ戻ってきた。米が流通したことからこの街で酒造りが行われ、塩や米の積み出し港として港が栄えると共に海運業も発展した。

現存する古い街並はこの竹原が栄えた頃の名残である。町屋の大半は江戸時代中期(18世紀頃)から明治時代(19世紀~20世紀初頭)に建てられたもので、最古のものは1691年に建てられた吉井邸(内部非公開)だ。竹原の町並みの特長は、一つの街区がそのまま伝統的な建築で構成されている点で、本通りと呼ばれるメインストリートに立って南北を見てみると、昔ながらの商家の建物が並び、かつて日本各地にあった伝統的な商家町にタイムスリップしてしまったかのような錯覚を覚える。

竹原で宿泊するなら、『NIPPONIA竹原』がお薦めだ。ここはフロント及びダイニング棟と、2つの宿泊棟、合計3棟が、街中に離れて建つ分散型ホテル。客室は全10室で、どれも古い日本家屋や蔵を現代的にリノベーションした建物で、竹原の重要伝統的建造物群保存地区に位置する。竹原の滞在を満喫できるだろう。
●広島県竹原市本町1-4-16 レストラン・フロント(HOTEI棟)
https://www.nipponia-takehara.com/
©VMG HOTELS & UNIQUE VENUES

竹原まで行ったらぜひ訪れたいのが、“ウサギの島”として知られる大久野島だ。竹原近くの小さな港からフェリーで島を訪れると、上陸するや否やたくさんのかわいいウサギが現れる(1000羽近くいると言われている)。

しかし島は歴史の闇も抱えている。旧・日本軍により1929年~1945年まで、秘密裏に毒ガスを開発・製造していた島だったのだ。当時、毒ガスの動物実験用にウサギが飼われていた。もちろん、戦後の毒ガス関連処理の際に全羽殺処分されたため当時のウサギの子孫はおらず、現在のウサギも1970年代に放されそれが野生化したものだと言う。しかし、かわいいウサギが毒ガス実験を思い起こさせ、歴史の闇を際立たせている。島には毒ガス開発に関する資料館や軍施設の遺構も残る。日本の歴史を知るひとつとして訪れてみたい。

大久野島行きのフェリーは忠海港から出ている、港から沖合3㎞に浮かぶ島までは所要時間片道15分。JR竹原駅からJR忠海駅までは電車で約20分の距離だ。
PHOTOS: RIO SHIRAI



西条/日本酒の三大生産地のひとつへ。

西条は、灘(兵庫県)、伏見(京都府)と並び、日本酒の三大産地と呼ばれる街だ。JR西条駅のすぐそばには「西条酒蔵通り」と呼ばれる約800mほどの通りがあり、現在も駅周辺で7社の蔵元が日本酒の醸造を行っている。ちなみに、駅の周りに酒蔵が集まったのではなく、元々、<白牡丹><亀齢><賀茂鶴>といった酒蔵があるところに、1894年、山陽本線の開通に合わせ駅をつくったという経緯がある。なぜこの狭い範囲に酒蔵が密集しているかというと、創業当時酒造りに適した水が出たのがこの地域だけだったからである。いずれにしても、日本酒好きにとっては、酒造り見学や酒の購入ができる酒蔵巡りはたまらないものだろう。

西条は、JR広島駅から山陽本線で約40分の距離にある。1970年代に広島大学が移転してきたことで学術都市、ベッドタウンとして開発され大きく発展した。そんな西条が酒造りで名を馳せるようになったのは、19世紀(江戸時代後期)のこと。この街は周囲を山に囲まれた盆地で、周囲の山からもたらされるやわらかい水は西条の美味しい酒づくりには欠かせないものになっている。

しかし酒造りを行った当初はこの地の軟水という水質が問題となった。江戸時代末期~明治のはじめにかけて、この街の酒造りは兵庫県灘の醸造法を倣って行われた。その際、酵母も灘から取り寄せたのだが、ミネラルが豊富な灘の硬水と違い軟水では思うように発酵が進まず、べたっとした甘い酒しかできず、しかも保存が効かずにすぐに腐ってしまうなどした。日本酒造りではカルシウムやマグネシウムなどのミネラルが酵母の栄養素となって発酵が活発に行われる。しかし軟水では、酵母が必要とする栄養素が少ないため発酵がゆるやかに進む特性があるのだ。試行錯誤の結果、明治の中頃には軟水でも美味しい酒を造る醸造方法が確立され、西条では「灘の男酒」(キレ味のある辛口)に対し、まろやかでふくよかな甘口の酒「女酒」が生み出されるようになった。

西条の街には多くの酒蔵が並ぶ。毎年10月には「酒まつり」が開催され、西条酒と呼ばれる日本酒を味わいに、約20万人の日本酒好きが訪れ、昼間から日本酒三昧となり、街が一番活気づく。
PHOTOS: RIO SHIRAI

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