January 24, 2025

2025年、福山・尾道で開催される<ひろしま国際建築祭>に注目です。

ライター:和泉俊史

丹下健三自邸復刻プロジェクトに関する展示が行われる<神勝寺 禅と庭のミュージアム>にある無明院。
© SHINSHOJI ZEN MUSEUM AND GARDENS 

<ひろしま国際建築祭>の会場のひとつとなる<LOG>。尾道の丘の中腹に位置する宿泊施設だ。
© SETOUCHI CRUISE

会場のひとつ<ONOMICHI U2>。サイクリスト向けホテルを含む複合施設だ。
© SETOUCHI CRUISE

2025年の日本は、文化・芸術イベントのゴールデンイヤーと呼ばれている。万国博覧会が大阪で開催されるのを筆頭に、3年毎に開催されているアートイベント「瀬戸内国際芸術祭」「岡山芸術交流」「国際芸術祭あいち」の開催が重なる年だからだ。さらにアート関係では「大阪・関西万博」に合わせ規模を拡大する「Study:大阪関西国際芸術祭」や、東京で初開催となる芸術祭「東京お台場トリエンナーレ」も予定されている。しかしなかでも注目なのが、アートではなく“建築”を切り口にし、初開催となる<ひろしま国際建築祭>だろう。

<ひろしま国際建築祭>は、3年に一度、広島県を中心に開催する建築文化を発信する建築展だ。初回となる『ひろしま国際建築祭2025』では、尾道市の「尾道市立美術館」や「ONOMICHI U2」、「LOG」、福山市の「ふくやま美術館」や「神勝寺 禅と庭のミュージアム」など、10を超える会場で、建築にまつわる展示・展覧会が約2か月間に渡り行われる。なかでも特筆すべきなのが建築祭の一環として尾道市立美術館で開催される『ナイン・ヴィジョンズ展:日本から世界へ 跳躍する9人の建築家』だろう。

これは建築界のノーベル賞とも言われる「プリツカー建築賞」を受賞した日本人建築家8組9名にスポットを当てた展覧会だ。実は日本はアメリカと並び「プリツカー建築賞」の最多受賞国で、日本人建築家の評価は世界的に高い。1987年の丹下健三の受賞を皮切りに、槇文彦(1993年受賞)、安藤忠雄(1995年受賞)、妹島和世・西沢立衛(2010年受賞)、伊東豊雄(2013年受賞)、坂茂(2014年受賞)、磯崎新(2019年受賞)、山本理顕(2024年受賞)と続く。では、なぜ日本の建築家は世界で評価され、どのようにして世界レベルに達したのか? その魅力と真相に迫るのがこの展覧会だ。

その他にも、建築界の巨匠、丹下健三の自邸(1953年・東京・成城で竣工/現存せず)を広島県福山市に再建するプロジェクトが進行中(2027年頃完成予定)だが、この丹下自邸に関する展示や、福山市・尾道市にある国宝や重要文化財に指定されている古建築に関する展示など、建築好きにはたまらない企画が盛沢山だ。

この<ひろしま国際建築祭>を目的に広島を旅するのもよし、大阪・関西万博とセットで旅行するのもよし。あるいは、瀬戸内海周辺に滞在し「瀬戸内国際芸術祭」と「岡山芸術交流」とこの建築祭を周遊するのもありだろう。2025年は、芸術祭・建築祭を目的に日本全国を旅することをおすすめしたい。

尾道の丘の上に建つ<尾道市立美術館>(設計:安藤忠雄)。ここで『ナイン・ヴィジョンズ展』が行われる。
© ONOMICHI CITY MUSEUM OF ART

2025年に日本で開催される主な文化・芸術イベント

大阪・関西万博
(大阪市夢洲)
4月13日~10月13日
https://www.expo2025.or.jp/

Study: 大阪関西国際芸術祭2025
(大阪市ほか)
4月13日~10月13日
https://osaka-kansai.art/

瀬戸内国際芸術祭2025
(香川県ほか)
春会期:4月18日〜5月25日
夏会期:8月1日〜31日
秋会期:10月3日〜11月9日
https://setouchi-artfest.jp/

国際芸術祭「あいち2025」
(愛知県)
9月13日〜11月30日
https://aichitriennale.jp/index.html

岡山芸術交流2025
(岡山市)
9月26日~11月24日
https://www.okayamaartsummit.jp/

ひろしま国際建築祭
(尾道市・福山市)
10月4日〜11月30日
https://hiroshima-architecture-exhibition.jp/

東京お台場トリエンナーレ2025
(東京・お台場)
10月18日〜12月25日
https://www.tot2025.art/


『ひろしま国際建築祭2025』総合テーマ

つなぐ——「建築」で感じる、私たちの“新しい未来”

地球規模で発生する自然災害や、戦争とそれに伴う難民問題、そして環境破壊——

21世紀に入って四半世紀経った今も、私たちは様々な問題に直面し、不安を感じながら日常生活を送っています。

またここ日本では少子化・高齢化が進み、経済の停滞や無秩序な開発で街の風景が変わり、活気が失われつつあります。

私たちはそのような状況のなかで、問題にどう向き合い、課題を解決していくべきでしょうか?

“建築” とは単に建物や街づくりをすることではありません。それは文化を生み・育み、私たちの生活をより豊かにしながら未来をつくっていくための「知恵」です。

建築を通じ、私たちの新しい未来について、考えてみたいと思います。

COURTESY KAMBARA TSUNEISHI FOUNDATION

2024年に「プリツカー建築賞」を受賞した山本理顕設計の<桃園市立美術館>。
©︎ RIKEN YAMAMOTO & FIELD SHOP

2013年に「プリツカー建築賞」を受賞した伊東豊雄設計の<台中国家歌劇院>。
© TOYO ITO & ASSOCIATES, ARCHITECTS

丹下健三の自邸(1953年東京にて竣工/現存せず)。この伝説的な住宅を広島県福山市に再建するプロジェクトが進行中だ。
PHOTO: KENZO TANGE, COURTESY OF MICHIKO UCHIDA

1993年に「プリツカー建築」を受賞した槇文彦がNYの世界貿易センター跡地に設計した<4ワールド・トレード・センター>。
© TECTONIC

『ひろしま国際建築祭2025開催趣旨

https://hiroshima-architecture-exhibition.jp/

巨大な内海に面した瀬戸内地域では古来、風土や景観、伝統に呼応した名建築の数々が生まれてきました。その背景には、日本が国家として形づくられた遣隋使・遣唐使の時代から近世の朝鮮通信使・北前船にいたるまで、広島県の位置する瀬戸内海が“文化・物流の大動脈”だったことが理由としてあります。日本はこの瀬戸内海を通じ、海外から人や文化を招き入れ、あるいは発信し、この海を通じ文化交流を行ってきました。古建築はもとより、自然と文明が築いてきた瀬戸内地域特有の磁力に吸い寄せられるように丹下健三、安藤忠雄、伊東豊雄、SANAA、坂茂といった現代の建築家たちも挑戦的で実験的な名作を次々と生み出しています。それゆえに瀬戸内地域は古建築から現代建築まで「建築文化の集積地」として貴重な建築の宝庫となっているのです。

“文化・物流の大動脈”であった瀬戸内海の周辺地域は“つなぐ”ことを鍵にその礎を築いてきたといえます。『ひろしま国際建築祭2025』は、「つなぐ——“建築”で感じる、私たちの“新しい未来” Architecture:A New Stance for Tomorrow」をテーマに、歴史、風土、景観、技術、思想などさまざまな視点から“建築”に触れ、考え、交わる機会をつくり、ここ瀬戸内で建築文化を感じることから、みなさんと“新しい未来”像を探りたいと考えています。

開催期間:
2025年10月4日(土)より2025年11月30日(日)まで。

開催地:
広島県尾道市・福山市

入場料:
3日間パスポート券 3,000円(予価)

主催:
神原・ツネイシ文化財団

参加建築家:
安藤忠雄、妹島和世、西沢立衛、伊東豊雄、坂茂、山本理顕ほか。

尾道エリア

尾道市立美術館|LOG|ONOMICHI U2ほか

福山エリア

ふくやま美術館|iti SETOUCHI|神勝寺 禅と庭のミュージアムほか

そのほか

瀬戸内海周辺のサテライト会場

ILLUSTRATION: RYOKO YAMASAKI/INFORAB.

Subscribe to our newsletter

You can unsubscribe at any time.

PREMIUM MEMBERSHIPS

1-month plan or Annual plan 20% off!

Premium membership allows members to Advance registration for seminars and events.
And Unlimited access to Japanese versions of articles.

CHOOSE YOUR PLAN

Subscribe to our newsletter