July 25, 2025
Vol. 50: FROM THE EDITOR
「何ごとの おはしますかは しらねども かたじけなさに 涙こぼるる」――これは平安時代末期に活躍した日本の歌人・西行(1118-1190)が、伊勢神宮について詠んだといわれる歌になります。簡単に説明すると、“そこにどのような尊い存在がいらっしゃるのかは分からないけれど、あまりにも畏れ多く、またありがたく感じ、感動して自然と涙がこぼれてきてしまう”という意味になります。私はここで詠まれていることが、一般的な日本人が伊勢神宮や神社に抱く感覚に近いのではと思います。日本人が昔から信仰の対象としてきたものは、太陽や、森、海、山など、つまり自然です。それは時に人間に対し大きな恵みを与え、ある時は無慈悲に猛威をふるう存在で、その人知を超えた力に対し抱く、感謝と恐れの感情なのだろうと感じます。
今回は日本の神社の中でも一番上位に位置する「伊勢神宮」の特集です。世界中でサステナビリティが叫ばれる昨今ですが、その言葉が生まれる1300年前から、「伊勢神宮」は持続可能性を実践してきたともいえます。それを象徴する最たるものが「式年遷宮」という儀礼です。今回の特集では、伊勢神宮のサステナビリティについて考えてみたいと思います。