September 26, 2025
2026年春に開業する「帝国ホテル 京都」の魅力に迫る。
2026年春開業予定の帝国ホテルブランド4拠点目のホテル。客室は55室でレストラン、バー、ウェルネス施設(スパ、プール、フィットネスジム)を備える。祇園甲部歌舞練場敷地内にある国の登録有形文化財「弥栄会館」の一部を保存・活用しており、ホテルは3つの異なるエリアで構成されている。
https://www.imperialhotel.co.jp/kyoto
COURTESY: IMPERIAL HOTEL
1890年に誕生した<帝国ホテル>は、この135年の歴史のなかで来日する海外要人・著名人を含め、世界中から多くの顧客を迎え入れてきた。そのような名実ともに日本を代表するホテルである帝国ホテルが、東京・上高地・大阪に続く4拠点目の新ホテルの地に選んだのは、国際的な文化観光都市として知られる京都だった。開業は2026年春。では一体、新たに開業する帝国ホテルブランドの『帝国ホテル 京都』とは、どのようなホテルなのだろうか。その魅力を探ってみたい。
まず最初に触れたいのがその立地だ。祇園という京都でも格式の高いエリアに位置し、ホテルの建物自体は、祇園甲部歌舞練場の敷地内にある弥栄会館(1936年竣工/国の登録有形文化財)という歴史的建造物の一部を保存活用したものだ。
90年近くの歳月を経て老朽化や耐震性の問題が確認されたことから、この建築の外観を守りつつ現行の建築基準法に適合した構造でホテルとして再生させることとなり、議論の末、西面と南面、2面の外壁と構造体の一部を保存しながら増改築することとなった。施工はかつて弥栄会館を設計した大手ゼネコン<大林組>に託された。その再生に当たっては細心の注意が払われた。例えば外壁のタイル。1枚1枚取り外して再利用する“生け捕り”を実施。風雨にさらされたタイルは脆くなっているので力加減を誤ると簡単に割れてしまう。最終的に全体の10%程度、約1万6,000枚のタイルを確保し、外壁に再利用した。ホテルのシンボルとなる南面タワーの外壁と西面の一部には、約90年前のタイルが落下防止対策を施した上でそのまま残され、残りの西面と南面は、再利用タイルと新たに作り直したタイルが共存している。
COURTESY: IMPERIAL HOTEL
© NEW MATERIAL RESEARCH LABORATORY
内装は、<新素材研究所>を現代美術作家・杉本博司と主宰する、建築家の榊󠄀田倫之が手掛けている。<新素材研究所>は日本古来の自然素材や工法を使用したデザインで高く評価される建築設計事務所で“古いものが、新しい”というコンセプトで活動してきた。ホテル空間は、3つのテーマ「時間と記憶の継承」「新旧の調和と対比」「歴史を語る素材と意匠」によってデザインされている。
『帝国ホテル 京都』は、どのような空間デザインやホスピタリティで、来年春に私たちを迎え入れてくるのだろうか。宿泊予約もこの秋からスタートするという。今から開業が楽しみである。
PHOTO: MIE MORIMOTO