April 24, 2026
「Destination Restaurants 2025」を振り返る(後編)。 – 印象に残った「命をいただく」を実感する2つのレストラン。

2021年に発足したジャパンタイムズが主催する日本発信のレストランセレクション「Destination Restaurants」。5年目を迎えた2025度に選ばれた10軒の取材を終えた今、この年の傾向を2回にわたってリポートする。今回はその2回目である。
前回は、今年2025年に選ばれたレストランの傾向として、上位10軒を絞り込むにあたり、特定の地域の店が競り合うことが増えているという話をした。富山と茨城の例を挙げたがこれらの地域ではシェフ同士の強い連携が見られ、結果多くの名レストランが生まれている。今回は2025年の取材のなかで、特に印象に残った2軒のお店を紹介したい。
地方では自家畑をもつレストランも多く、シェフ自ら山に出かけ、春は山菜、秋はきのこを採るケースも多々見られる。だが、2024年に「The Destination Restaurant of the year 2024」に選ばれた北海道『Elezo Esprit』のように、畜産農家を営みジビエの処理場も備えた、食肉の生産から料理までを行う店は限られる。そんななか「Destination Restaurants 2025」では羊や鶏といった命を食肉に変え、ガストロノミーなひと皿へと昇華させる2軒がリストインした。
一軒目はアイヌ文化が伝わる北海道白糠郡白糠町にある『茶路めん羊牧場』併設の『ファームレストラン クオーレ』。店の前に広がる15haの牧場では約800頭の羊を育て、羊肉の加工や販売を手掛けている。もう一軒は “農場の傍にある青空レストラン”をコンセプトとして掲げる京都府綾部市の『田舎の大鵬』だ。養鶏も手がける『蓮ヶ峯農場』の隣に店を構え、コースを提供する直前に、ゲストとともに生きた鶏を締め、メインの食材にする。
二軒とも食肉生産現場の至近距離にいる利点を活かし、羊、鶏、それぞれのさまざまな部位の肉や内蔵を余すことなく調理する。『ファームレストラン クオーレ』では生後6〜15ヶ月齢のラム肉をはじめ、ホゲットやマトンなど、生育期間の異なる精肉や、脳みそ、胸腺、心臓、腎臓などがメニューを彩る。『田舎の大鵬』ではオーナーシェフの渡辺幸樹が鶏を捌きながら、「これは肺、これは殻が硬くなる前の卵」と各部位をひとつずつ説明もしてくれる。
産地から離れた都市部では決して味わえない鮮度の、珍しい部位を味わうことは、それだけで特別な食体験だ。そして、それ以上に「生きるとは、命をいただくこと」であるという事実に、改めて思いを致すことになる。そこには「おいしい」だけでは語れない、ガストロノミーの本質があるようだ。


鶏胸肉にネギ、ピーナッツを加えた四川風の炒め物。華やかな香りをもつ四川省産の唐辛子と花椒で麻辣風味に仕上げた一品。

● 京都府綾部市八津合町別当2-1蓮ケ峯農場
連絡はInstagramのダイレクトメールで。
Instagram @inakanotaihou

渡辺幸樹(わたなべ こうき)
1981年、京都府京都市生まれ。京都市で父が始めた家族経営の中国料理店『中國菜 大鵬』の2代目として誕生。近所の中国料理店で研鑽を積み、2006年より『大鵬』で働き始める。四川にも度々出向き、本場の味を学び、2014年に店をリニューアル。自然派ワインを置いたことから、食を取り囲む環境に関心を抱き、その流れで2021年末に綾部市『蓮ヶ峯農場』の隣に『田舎の大鵬』を開店。2023年夏にリニューアルオープン。



● 北海道白糠郡白糠町茶路川西
https://charomen-cuore.com

漆崎雄哉(うるしざき ゆうや)
1991年北海道白糠郡白糠町生まれ。札幌市で調理師学校を卒業後、同市の人気イタリアン〈オステリア ヨシエ〉で3年間修業。2014年、故郷の白糠町にUターンし、〈茶路めん羊牧場〉の仕事に従事。同牧場に併設された2015年〈ファームレストランクオーレ〉オープンに伴いシェフに就任。羊肉をメインに、白糠町の野菜や魚介類で、土地そのものを表現する料理を作っている。





