January 30, 2026

【田舎の大鵬】命をいただく食体験ができる綾部市の野外・中国料理店。

ライター:寺尾妙子

ゲストも参加して締めたばかりの鶏の内臓の湯引き。肺、心臓、レバー、卵管に加えて腸など市場には流通しない部位も使用。春菊やネギを添え、醤油や鶏油を回しかけて完成。
PHOTOS: TAKAO OHTA

京都駅から車で約1時間半。京都府北部に位置する綾部市に2021年末にオープンして以来、中国料理店『田舎の大鵬』は唯一無二のスタイルで国内外のフーディーたちを魅了してきた。天候が許せば、ウッドデッキで。それ以外の日に通されるメインダイニングも屋根やビニールカバーの覆いはあるものの、板壁は隙間だらけで風が吹き込んでくる。ストーブは焚かれているものの、冬場はコートを着たまま食べることになる。なぜなら、ここは“農場の傍にある青空レストラン”がコンセプトだからだ。オーナーシェフ、渡辺幸樹は語る。

「京都市内にある実家の『中國菜 大鵬』で扱っている自然派ワインをの生産者の元を訪ねると、ヨーロッパでは畑の前のテラスで食事をするんですよ。その辺に生えているハーブを摘んでパスタにパラパラっと振ったりして。それを見て、これ中国の“農家楽(ノンジャーラー)”と一緒やん! と思って。こんな風に自然の中で食事を提供するというのを自分でもやってみようと思ったのが、ここを始めたきっかけです」

ここ10年ほど、中国各地の大都市周辺でブームとなっている食を絡めた農村観光、農家楽をやるために、渡辺が狙いを定めたのが『蓮ヶ峯農場』と隣接した土地だった。

京都(中国料理)
田舎の大鵬
京都府綾部市八津合町別当2-1蓮ケ峯農場
連絡はInstagramのダイレクトメールで。
Instagram @inakanotaihou

「養鶏も手がけている『蓮ヶ峯農場』の農場長と出会って、一緒に協力してやることになりました。当初はたまに来てバーベキューをしたり、お惣菜を作って近所の人に販売したりしていたのですが、徐々に友だちや『中國菜 大鵬』のお客さまから問い合わせをいただくようになって、気づいたらレストランをオープンしていたんです」と渡辺は言う。

最初は外にテーブルだけを置いていたが、ウッドデッキができ、2023年夏にはキッチンとダイニングを作ってリニューアルオープン。到着したゲストはまず、農場で馬や豚と会ってから、ダイニングの外へ案内される。すると渡辺が鶏小屋から生きた鶏を抱えてやってくる。鶏は育成期間2年。毎日、卵を産み続けた卵肉兼用鶏だ。渡辺が首元にゆっくりナイフの刃を当てる隣で、ゲストは鶏の脚を抑え、命が尽きる瞬間を身をもって体験する。1羽の鶏から鶏肉となったそれを、渡辺は手早く捌いていく。「これは肺、これは殻が硬くなる前の卵」と次々、内臓や部位を紹介し、すべて捌き終わるとようやくゲストは着席し、1日1組限定(4〜12名)、おまかせコース¥24,000が始まる。

メインの食材はもちろん、先ほど締めたばかりの鶏だ。まず、市場では出回らない鶏の腸を始め、希少な内臓類の湯引き、凝固した血を具にした鶏のスープや胸肉の炒め物などが盛り込まれる。それらはこれ以上ないという新鮮さ以上に特別な感動をもたらしてくれる。「生きるとは、命をいただくこと」なのだ。ほか、時期によって鹿や猪などのジビエ、スッポンやナマズ、鯉などの川魚、自家栽培の野菜やハーブなど近隣の食材がコースを彩る。ここでなら、シャンデリア輝く空間で食すのとはまた別の、至福の時間を過ごせるはずだ。

渡辺幸樹(わたなべ こうき)

1981年、京都府京都市生まれ。京都市で父が始めた家族経営の中国料理店『中國菜 大鵬』の2代目として誕生。近所の中国料理店で研鑽を積み、2006年より『大鵬』で働き始める。四川にも度々出向き、本場の味を学び、2014年に店をリニューアル。自然派ワインを置いたことから、食を取り囲む環境に関心を抱き、その流れで2021年末に綾部市『蓮ヶ峯農場』の隣に『田舎の大鵬』を開店。2023年夏にリニューアルオープン。

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