November 07, 2023

町民や事業者が環境保護で連携、海辺の町・葉山

Maiko Muraoka Contributing writer, Translator: Tomoko Kaichi

葉山町の山梨崇仁町長 | 葉山町

神奈川県葉山町は、ジャパンタイムズが昨年主催した「第4回The Sustainable Japan Award」において「Satoyama部門優秀賞」を受賞した。地域住民や事業者を巻き込んで進める環境に配慮した活動が評価された。

三浦半島の西岸に位置する葉山町は、夏は南風、冬は北風を遮る山々に囲まれた温暖な気候の海辺の町だ。風光明媚な町並みと豊かな自然、そして皇族方が静養に訪れる御用邸の町として知られ、約3万2400人が暮らす。

山梨崇仁町長は最近のジャパンタイムズのインタビューで、住民が町とその歴史に誇りを持ち、若い世代は郷土愛を持って育っていると、町の魅力を語った。地域のために役に立ちたいという住民の思いは、いまも昔も強いという。

町全体で推進する環境保護活動を支えるのは、こうした町民の誇りと高い意識だ。その積極性はほかの自治体と比べても際立っている。初期の取り組みのひとつは、全世帯に呼びかけての27種類のゴミの分別収集だった。2019年9月には「はやまクリーンプログラム」を開始。国連のSDGs(持続可能な開発目標)達成に向けた活動の一環として、公共施設へのウォーターサーバー設置やマイボトル利用を促進する。

「町全体で力を合わせて変わろうという意志を感じた。その認識が2021年3月の『はやま気候非常事態宣言』の発表につながった」と山梨町長は振り返る。2016年にオーストラリアで100を超える自治体が発出した「気候非常事態宣言」はその後世界に広がり、今年7月までに2339の自治体・地域で宣言された。葉山町は日本で同宣言を行った135の自治体のひとつだ。

「ブルーマーブル」は定期的に海岸清掃を行っている | 葉山町

2022年、葉山町の環境保護や住民のウェルビーイング、そして社会に様々な形で貢献する事業者や団体を紹介する「はやまエシカルアクション」が始動した。同町政策課の田村樹理広報担当はこのプロジェクトについて、人知れず地域社会や環境に貢献してきた人々に光を当て、企業・団体が互いに学び、さらに何ができるかを考えるきっかけになったと話す。「町内で参加を呼び掛けたところ、特別なことは何もしていないと躊躇(ちゅうちょ)する事業主もいた。しかし、そんな事業主も実際は、日頃の事業活動において、そうと気づかず持続可能な社会の実現に寄与してきた」という。

山梨町長は、最初のステップは持続可能性のために取り組む企業や店舗、レストランを認定して発信することであり、次にそれら事業主と町役場の連携を強化し、優れた商慣行の創出と拡大で協力することだと語った。

葉山町は今年、環境や社会に配慮した優れた取り組みを行う町内の企業や団体を表彰し、知見や体験を共有することを目指して「はやまエシカルアワード表彰式」と「エシカルシンポジウム」を初めて開催した。田村氏は、「シンポジウムとアワードの最大の成果のひとつは参加企業同士が交流し、互いの取り組みを加速させるために協力し合うようになったことだ」と評価する。

自治体を超えた連携もある。葉山町の北約20キロに位置する横浜氷取沢高校ではこの2年間に、ボランティア部の生徒延べ160人以上が海岸清掃活動に参加した。「生徒たちは気候変動の影響と、自分たちの未来のために行動する必要性を感じている。世界のいまの状況を作った責任がある、上の世代の一員としてはそれが申し訳なく、彼らの行動をサポートするのは当然だ。同時に彼らの行動は我々を勇気づけ、やる気を引き出してくれる」と山梨町長はいう。

シンポジウムには7~13歳の子供たちで構成される「ブルーマーブル」という団体も招待され、プレゼンテーションを行いパネルディスカッションに参加した。同団体は定期的に海岸の清掃活動や住民の環境意識調査を実施している。山梨町長は、町の月刊広報誌の表紙を飾った満面の笑顔の子供たちの写真を見ながらこう言った。 「彼らは町や環境のためになることを心から楽しんでいる。それがいいんだ」。

葉山町は来年、御用邸ができて130周年と、その翌年には町制施行100周年を迎える。山梨町長は、「これらの記念行事に先立ち、我々は次の世代と協力し、次の世代のために持続可能性の取り組みを加速させることを約束する」と力を込めた。


「The Sustainable Japan Award」は、持続可能な社会の実現に貢献した個人や企業、団体を表彰するアワードです。詳細はhttps://sustainable.japantimes.com/sjaward2023をご覧ください。

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