August 31, 2023
「PRI年次総会@東京のESGインベストメントトークで『危機感』に立ち向かう」
ESG(環境、社会、ガバナンス)投資に関する主要な国際会議「PRI in Person」が10月に初めて東京で開催される。産業界が気候変動問題に取り組むなか、持続可能な社会実現のために投資家がとるべき具体的な行動が焦点となる。
この会議は、責任投資を推進する機関投資家等のための会議で、国連が提唱したイニシアチブであるPRI(国連責任投資原則)が毎年開催している。責任投資とは、投資判断や分析の際にESG要素を考慮する投資アプローチである。10月3日から5日まで予定されている第15回目となる今大会は、7年ぶりにアジアで開催する。1,000名以上の参加者が見込まれており、アセットオーナー、インベストメントマネージャー、政策立案者がESGに関する課題について話し合い、直近の状況について情報交換を行う。
「時間的な余裕はどんどんなくなってきている。目標と現実のギャップが狭まっていないという危機感は、PRIだけではなく、他の国際機関も持つようになってきている」と日本生命執行役員の木村武氏は話す。日本生命は東京大会のリードスポンサーを務める。
気候変動に関する一連の国際目標が採択された後、金融機関や企業は温室効果ガスの排出量削減目標を公表した。しかし、進捗状況は必ずしも芳しくない。このような背景から、今回の国際会議では「コミットメントから行動へ」がテーマになっていると木村氏は説明する。
2015年、国連は貧困、飢餓、気候変動問題を解決するための17項目の目標から構成される持続可能な開発目標(SDGs)を採択した。同年、第21回国連気候変動枠組み条約締結国会議(COP21)は気候変動問題の新たな国際的な枠組みであるパリ協定を採択した。
東京大会に関しては、国際的な目標を達成するための具体的な行動について、参加者に「」対して何らか提案できる場にしたいと木村氏は言う。
多くの投資家は、持続可能な社会の実現に少しでも貢献したいと強く願っているが、具体的にどのような行動をとればよいのかわからないケースも多いと木村氏は話す。PRI署名機関に対して行われたオンライン調査によると1,487の回答のうち63%が、責任投資とはESGのリスクを管理することだけではなく、将来のアウトカムの創出にむけて行動を起こすことであると回答している。なお、「既に取り組んでいる」との回答は41%にとどまる。
また木村氏は、現在のアメリカにおける反ESG投資の一部の動きは責任投資の動向に影響を及ぼすものではないと考えている。「現時点での参加者の登録状況を見ると、今年も圧倒的に米国の登録者数が多い」と説明する。「このような反ESGの動きが理由で投資家が消極的になっていたり、または前向きな行動が止まっていたりということはない」
報道によると、6月にブラックロックのラリー・フィンクCEOは、環境、社会、ガバナンスの問題に関して、今後「ESG」という言葉を使わないと発言した。それは、この表現があまりにも政治的になったことが理由だという。しかし、ビジネス界でESGスタンダードの導入を推進するフィンクは、ESG問題に関するブラックロックのスタンスに変化はないと述べている。
東京大会で注目が集まるもう一つのトピックは生物多様性だ。気候変動や人権のトピックと同じように、PRIは自然や生物多様性に関するイニシアチブを立ち上げる計画だ。それによって、2030年までに生物多様性の損失を防ぎ、その流れを反転させるために投資家同士の連携を強めることを目指す。その最初の焦点は、生物多様性損失の主な原因となっている森林破壊と土壌の劣化である。
2017年に、PRIは世界で温室効果ガスを大量に排出する企業に対して気候変動に必要な対策を打つことを促す「Climate Action 100+」というイニシアチブをすでに立ち上げている。さらにPRIは、機関投資家が人権や社会課題に関して協働エンゲージメントを促すため、「Advance」というイニシアチブも推進している。
木村氏は、東京大会のリードスポンサーとしてのミッションの一つは、どの地域にも適用可能な脱炭素化のための金融支援アプローチ(one-size-fits-all de-carbonization financing approach)は存在しないことを、多くの大会参加者に理解してもらうことだと話す。「インダストリーミックス、エネルギーミックス、そして社会構造はアジアと西側諸国とでは異なる。気候変動への耐久性を有する排出量ゼロの経済に転換していくには、各国における従業員・地域社会・消費者それぞれの社会状況を考慮に入れた包括的なアプローチが必要になる」「アジアの脱炭素化のために必要な資金と、既に調達された資金とのギャップを埋めるためには、西側諸国の投資家がアジアの地域特性の理解を深めることが不可欠だ」と木村氏は語る。
もう一つのミッションは、大会に登壇したパネリストやアジア諸国の政策担当者を日本生命の大会スポンサー用ブースに招き、議論を深めてもらうことだ。「アジアや欧米のステークホルダーが、CO2排出量ネットゼロの国際目標を達成するために意見を交わすことを願っている」と木村氏は話した。
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