January 07, 2025

水と森と次世代を育むサントリー

Maiko Muraoka Contributing writer
Translator: Tomoko Kaichi

ベトナムで開催した水育グローバルサミットでは自然体験プログラムを実施した | サントリー

サントリーホールディングス株式会社は「人と自然と響きあい、豊かな生活文化を創造し、『人間の生命(いのち)の輝き』をめざす」を企業理念に掲げ、食品や飲料のグローバルな販売にとどまらず人々の豊かな生活づくりに貢献する。1899年の創業以来、変遷する時代のニーズに応えながら「自然と社会に還元する」という自らの責任を誠実に果たしてきた。

「環境保護分野では、『持続可能性』という概念が関心を集めるはるか前の51年前に鳥類保護活動を始めた」。藤原正明・サステナビリティ経営推進本部長はこう語る。

ペットボトルのリサイクルや温室効果ガス排出量の削減とともに、サントリーは自社事業にとって、また全人類にとって必要不可欠な水資源の持続可能性向上に注力する。

サステナビリティ経営推進本部の瀬田玄通部長は世界気象機関の「2021年地球気候の現状に関する報告書(2021 State of Climate Services)」を引用し、水不足に直面する人の数は2050年までに世界で50億人を超え、2018年の36億人から大幅に増加すると危機感を募らせる。

「水資源の適切な利用と保全は、同じ水源を利用するすべての人にとって極めて重要な課題だ。誰かが水を独占したり使い切ったりすることは許されない。企業として公平に行動しているか、私たちはつねに監視され、試され、評価されている」と藤原氏は話す。

自社工場での節水に加え、やわらかくふかふかの土壌が再生農業や水の浸透にいかに重要かを伝える活動や、十分な日照を確保して生物多様性を育み、豊かに地下水をたくわえた土壌をつくるための森の管理にも取り組む。サントリーが「天然水の森」と呼ぶこの活動は、自社工場がある熊本県阿蘇で2003年に開始した。

タイのラヨーン県で行った水育ウォーターヒーロー・キャンプ(Mizuiku Water Hero Camp)では、子どもたちが健康な水循環の重要性について学んだ | サントリー

天然水の森は現在までに16都府県の26カ所に広がり、40人以上の森林専門家や地元の関係者の協力を得て行われている。対象とする森林面積は1万2000ヘクタールにおよび、サントリーが国内工場で汲み上げる地下水量の2倍以上の水を涵養する。

「森林と水源を守る活動には、地域の協力と次の世代を巻き込む努力が欠かせない」と瀬田氏は話す。サントリーが水の循環とその保護について子どもたちに学んでもらう教育活動として次世代環境教育「水育(みずいく)」を立ち上げたのも、そのためだ。水育の一環で2004年に阿蘇で行った最初の自然体験プログラム「森と水の学校」では、子どもたちはキャンプやさまざまなイベントを通して森や水の大切さを体感した。

現在は阿蘇を含む全国4カ所で屋外プログラムを実施するほか、新型コロナウイルス禍に開始したオンラインプログラムを展開する。長年にわたり内容の充実と体系化をはかり、子どもだけでなくその保護者も自然について学ぶ機会を提供する。瀬田氏は続ける。

「2006年からは小学校で授業も行っている。小学校の教員と協力し、授業の第1部で水の循環について伝え、第2部では天然水の森の活動を中心に、水を守るために児童1人ひとり何ができるかを一緒に考える」

双方向のオンラインプログラムでは、「水育講師」がリアルタイムで森に入ったり、ドローンで森を上空から俯瞰したりすることもあるという。

藤原正明サステナビリティ経営推進本部長 | サントリー

これまでに47都道府県から子どもとその保護者、教員など25万人以上が水育に参加した。サントリーは工場を持つ国を皮切りに水育の海外展開も進めており、健全な水循環に重点をおき、地域固有の課題にNPOなど現地関係者と連携して取り組んでいる。

「一番時間のかかるのが適切なパートナー探しだが、いったん見つかれば後はスムーズにいく。工場の従業員も水育に積極的に参加しており、水問題を無視して飲料事業は成り立たないという危機感を共有している」と藤原氏は話す。

2015年には海外で初めてベトナムで水育を実施した。衛生管理が水をとりまく大きな問題の1つであり、水の循環と持続可能性を中心とする通常の授業に加え、小学校で浄水設備やトイレの改修を支援した。活動は現在も続いており、藤原氏は「教員が自分たちで水育を企画できるように、教員向けガイドの作成でベトナム政府と協力している」という。

サステナビリティ経営推進本部の瀬田玄通部長 | サントリー

2024年4月、サントリーは「第2回水育グローバルサミット」をベトナムで開催した。藤原氏によると、「水育を実施するすべての国から水育のリーダーが集まり、ベストプラクティスを共有した。参加者は他国の発表に熱心に耳を傾け、共感したり学んだりした」。

水育は、日本以外ではタイ、フランス、中国、スペイン、イギリス、ニュージーランドに広がった。「ニュージーランドでは昨年、地元のNPOと協力し、小学生を対象に学校周辺のゴミを拾って分別するプログラムを行い、自然や川をきれいに保つためにはポイ捨てをしないことが大切だと呼びかけた。プロジェクトから得られたデータは、このNPOの今後の活動に役立つだろう」と瀬田氏は話す。

6月にはタイのラヨーン県でキャンプイベントを開催した。瀬田氏によると、同社が手掛けたこの種のイベントとしては最大規模で「30校から約450人の子どもと60人の教員が参加し、マングローブ林の散策や地域の池の水質検査、海岸でのプラスチックゴミの回収など、自然の中での体験を通して気候変動や水循環について学んだ」という。

サントリーは、森林保全と環境教育を両輪で継続するコミットメントを表明。藤原氏は、企業の持続可能性への取り組みは環境情報開示要件を満たすためではなく、自然と社会のために行われるべきだと強調し、次のように締めくくった。

「これまで何十年もそうしてきたように持続可能性を達成するための努力を続け、結果を出し、世界に活動を広げたい」


サントリーHDは、ジャパンタイムズと協力して持続可能社会の実現に向けた日本の取り組みを発信する企業グループ「Sustainable Japan Network」の会員です。ネットワークへの参加や活動詳細はウェブサイト( https://sustainable.japantimes.com/sjnetwork-jp )をご覧ください。

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