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発酵から生まれるサスティナブルなファッション。徳島の伝統工芸「阿波藍」の復興

June 28, 2021

ライター: 塚田有那 TRANSLATION: CARRIE EDWARDS  EDIT: JAMES KEATING

Watanabe’sのコンセプトは「畑からクローゼットまで」。藍の栽培も自分たちで行う。藍の採取で手が真っ青になる。
写真提供/Watanabe’s

四季のある日本では、夏や秋に採取した植物を1年中活用する技術が発展してきた。それは食品のみならず、衣料の世界にも広がっている。徳島県を代表する伝統工芸「阿波藍(あわ・あい)」は、夏に採取された藍を長期間発酵させて染料に仕上げる独自の染め文化だ。世界中に藍染め文化は存在するが、多くはインド藍などのように高温多湿な国で藍を年中栽培して10日程度で染料にする。一方、阿波藍は二度にわたる発酵を重ねて、丸1年をかけて染料をつくりだすという。いま新たに阿波藍ブランドを発信する「Watanabe’s」の渡邊健太氏は、この発酵文化に魅入られた一人だ。

Watanabe’s は、2014年に、NYブルックリンで阿波藍ブランド「Buaisou」のスタジオを開設した。そのことをきっかけに、海外からの注文も増えた。
写真提供/Watanabe’s

「かつては都心で仕事をしていたのですが、ある日藍染めの体験に行って、真っ青に染まった自分の手を見たとき衝撃が走ったんです。これをやるしかないと心に決めて、10年程前に徳島で阿波藍をつくる藍師(藍を発酵させて加工する人のこと)の門を叩きました」。

 渡邊さんが特に興味を持ったのは、発酵を用いた生産プロセスだという。

「夏に採取した藍の葉を乾燥させて、まず『すくも(Sukumo)』と呼ばれる染料のもとをつくります。その後土間に葉を広げて、水を打って空気を入れると熱発酵をはじめます。この作業を4ヶ月間、20回以上繰り返して色を凝縮させていくんです。1年中藍と向き合っていますが、いい葉をつくれると色にも変化が出ますし、毎日楽しみがありますね」。

 そうした長い過程を経て生まれる阿波藍だが、天然の藍を発酵させた「すくも」をつくる技術の担い手は年々減少し、一度は県内5軒にまで減ってしまったという。現在このすくもづくりから染色、衣服の生産・販売までを一貫して行うのは県内でも渡邉氏の「Watanabe’s」と「Buaisou」というブランドの2ヶ所のみだ。

「現在の服作りは、農作物の一種である「すくも」の栽培、染色、衣服の生産・販売を一貫して自社で行っているので、無駄なコストをかけず適正価格で販売できる。生産規模とブランドの持つ価値観とのバランスが、いまちょうど合っていると感じますね。またこの数年で風向きが変わり、消費者のほうも僕たちのようなサスティナブルな姿勢のブランドを好むようになった傾向を強く感じます」。

Watanabe’sは、藍染めのシャツやジーンズなどの自社での商品開発の他、ファッション企業とのコラボレーションも行う
写真提供/Watanabe’s

これまでシーズンごとに大量の服が生産されてきたファッション業界だが、サスティナブルなあり方を見直す声が高まっている。渡邉氏の語る等身大のものづくりは、発酵という人間だけでは制御しえない世界とも相性がいいのかもしれない。

「見えない菌や植物など、常に人間以外のものと対峙していると感じます。人間ができるのは準備と環境づくりだけ。その風土を理解することが、良いものをつくり続ける一番の秘訣ですね」。

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