September 26, 2025
Vol. 52: FROM THE EDITOR
日本で本格的なワインづくりが始まったのは1877年(明治10年)、今から約150年前のことになります。現在の山梨県に日本初の民間ワイン醸造所が設立されました。以来、日本でもワインづくりが行われていますが、日本はヨーロッパの主要産地と比較すると全般に雨量が多く多湿な気候で、決してワインづくりに適した国とはありません。
しかし地形も山地・盆地・積雪が多いところもあれば温暖な地域もあるといった具合にそれぞれ違い、ワインづくりで重要視される「テロワール」、つまりその土地のもつ気候風土や土壌などからすると、個性的かつバラエティーに富んだワインを生み出すポテンシャルを秘めています。また「マスカット・ベリーA」や「甲州」といった日本独自のふどう品種でつくられたワインも多く、日本料理にあう繊細さが特徴ともいえます。
近年、日本のワインは生産量も増え、世界的に高い評価を得るようになってきました。しかし心配なのはこの数年特に顕著となっている温暖化に伴う異常気象です。日本だけでなく、産地として知られるフランスやアメリカなどでも高温や冷害でのぶどうの生育不良や品質低下、あるいは山火事などでブドウ畑が焼失するなど深刻化しています。グラスに注がれたワインを見つめながら、ワインがつくられる環境にも思いを馳せなくてはならない、今やそういう時代になりました。