April 27, 2026
【大和ハウス工業】7つのゼロを掲げ、総合力で環境に挑む

Daiwa House’s strong points
1.CDP「Aリスト」2025年版で、世界27社のトリプルA企業の1社に選定
2.CO2削減や森林、水、資源など7項目で「環境負荷“ゼロ”」を目指す
3.住宅は「断熱等級6」を標準化、次世代省エネ住宅「GX ZEH」に備える
4.大型商業施設や事業施設も手がける「総合力」で課題解決に挑む
サステナビリティで先行するハウスメーカーとして、積水ハウスと並び称されるのが大和ハウス工業だ。大型商業施設なども手がける総合デベロッパーでもあり、2025年3月期のグループ売上高は約5兆4348億円。住宅からオフィスビル、物流施設、ホテル、病院、データセンターまでと広く手がけるだけに、環境への責任も広範だ。
2016年度には環境長期ビジョン「Challenge ZERO 2055」を策定し、サステナブル(持続可能な)社会の実現を目指し、4つの環境重点テーマ(気候変動の緩和と適応、自然環境との調和、資源循環・水環境保全、化学物質による汚染の防止)のもと重要7項目の目標に「チャレンジ・ゼロ」を設定。2030年までの目標も明確にした。
2018年には住宅・建設業界で世界初となる「SBT」「EP100」「RE100」への同時参画も果たした。こうした積み重ねが、外部からの高い評価につながった。
CDPの2025年版「Aリスト」で、大和ハウス工業は「気候変動」「フォレスト」「水セキュリティ」の3部門すべてで最高評価の「トリプルA」を初達成した。トリプルA企業は世界で27社。日本企業では積水ハウス、豊田通商、大東建託、花王、ユニ・チャームと並ぶ6社のうちの1社となった。
大和ハウス工業は気候変動のAリストに8年連続、水セキュリティでも4年連続で選定されており、この点でも国内住宅業界トップクラスの実績を誇る。
サステナビリティの分野で積水ハウスと双璧を成す大和ハウス工業。しかし、その事業領域も、アプローチも、大きく異なる。
「断熱等級6」標準化で「GX-ZEH」に備える
大和ハウス工業は2015年のCOP21で採択されたパリ協定を受け、翌年に7つの“チャレンジ・ゼロ”を掲げた。
「2050年に近づいてからでは遅い。2030年までにどこまで進められるかが重要だという意思を、トップが早くから示したことが大きかった」と経営戦略本部サステナビリティ統括部の山下裕部長は話す。
チャレンジ・ゼロの主柱が、「まちづくり/事業活動/サプライチェーンにおけるCO2の“チャレンジ・ゼロ”」。新築建築物のネット・ゼロ・エネルギー化や既存建築物の省エネ改修を通じ、2050年のカーボンニュートラル実現を目指す。
大和ハウス工業は「ZEH(net Zero Energy House)」の普及でも先行する。太陽光発電システムを備え、国のZEH基準を満たす住宅を標準仕様とし、2024年度に販売した戸建住宅に占めるZEH比率は99%に達した。一条工務店の100%に次ぐ業界2位である。
特筆すべきは、2025年7月から注文住宅を対象に「断熱等級6」を標準化したことだ。従来のZEH基準は断熱等級5以上で満たせるが、2027年4月に運用開始予定の新基準「GX ZEH」では6以上が必須となる。大和ハウス工業は先んじて対応した。
また、分譲マンション「プレミスト」のすべての着工物件で2024年度からZEH-M仕様を標準採用とするなど、共同住宅・マンションのZEH化も急速に進めている。賃貸用途の共同住宅も含めたZEH-Mの建築実績は同年度、2012棟に達した。
ただ、これだけでは足りない。大和ハウス工業の売上高に占めるハウジング領域の比率は約半分で、事業・商業施設が約47%を占めるからだ。用途も規模も異なる建物・事業を横断しながら脱炭素を進めなければならない。
事業・商業施設に関しては、環境基準「ZEB(net Zero Energy Building)」への対応を進め、同社グループのZEB実績は2024年度、累計で1661棟となった。
こうしたZEH、ZEH-M、ZEBへの対応は、バリューチェーン全体から排出されるScope3のうち「販売した建物の使用段階」の削減に効く。一方で、建築資材の調達や輸送に伴う排出も大きく、山下部長は「サプライヤーに意識が浸透しないと、削減目標の達成は難しい」と話す。
そこに向け大和ハウス工業は「サプライチェーンサステナビリティガイドライン」を策定。主要サプライヤーと対話を重ねた結果、SBT水準(2℃)のGHG削減目標を設定するサプライヤーは全体の9割以上となった。
建築・建設以外の面でも、カーボンニュートラルへの寄与を模索する。2023年には、日本で初めて投資用不動産の社内投資判断基準として「インターナルカーボンプライシング制度(ICP)」を導入。自社の太陽光発電設備から一般送電網を経由して他社に供給する「オフサイトPPA」事業も拡大している。
GHG全体に占める比率は大きくないものの、自社起因のScope1、2でも事業所のZEB化や再生可能エネルギー活用を進め、カーボンニュートラルに突き進む。
そうした取り組みの積み重ねが、2030年のGHG40%削減(2015年比)と2050年ゼロ目標につながる。40%減は絶対量で約646万t。この規模を踏まえれば、達成難度は決して低くない。
それでも、大和ハウス工業はハウスメーカーの枠を超えた複雑なバリューチェーン全体の変革に挑んでいる。しかも、“ゼロ”を目指すのはCO2だけではない。

撮影:井上 理
今に生きる創業者・石橋信夫氏の教え
「チャレンジ・ゼロ」はCO2削減だけにとどまらない。木材調達では森林破壊ゼロ方針に基づき合法性・持続可能性に配慮した木材の調達を推進。森林破壊リスクが高いCランクの木材比率を0.5%まで低減した。生物多様性に配慮した緑化や、水使用量の削減・循環利用にも取り組み、それぞれの領域で環境負荷“ゼロ”を目指す。
再生可能な素材、リサイクル素材の使用を100%にすることを目指し、サーキュラーエコノミーへの対応も進めている。買い取った既存住宅をリニューアルして再販売する「リブネス」事業、および、大規模な団地・タウンをまるごと再生する「リブネスタウン」プロジェクトなどでは、スクラップ&ビルドによる新たな資源投入量を削減する効果を期待している。
なぜこんなにもゼロが並ぶのか。それは、事業領域の広さと創業理念に起因する。
「当社は事業領域が広いからこそ、カーボンニュートラルだけではなく環境への取り組み全般でいろんなアプローチができます」と前出の山下部長。そして、こう続ける。「もともと当社の事業のベースには、創業者の思いがあります。これは今のトップもよく言うことですが、『儲かるからではなく、世の中の役に立つからやるんだ』と」。
創業者の石橋信夫氏は1963年、社員向けの著書『わが社の行き方』を遺した。今でも新入社員には全員に配られ、全従業員が熟読するバイブルとして生きている。
企業は社会の公器であるべきであり、世の中に役立つから事業が成り立つという石橋氏の教えが、時間を超え、大和ハウス工業を突き動かす。単なる社是・理念ではなく、歴代トップの経営判断の拠り所として受け継がれてきた点に、この理念の強さがある。
山下部長は「これは私見ですが」と前置き、こう言う。「環境だけではなく、空き家問題や、地震・洪水災害への備えなど、解決すべき社会課題はたくさんある。面で大規模な開発を手がける当社だからこそ、できることが、もっとあるはずです」。
“ゼロ”の並びは、事業領域の広さや複雑さを映すと同時に、総合デベロッパーだからこその使命感の現れでもある。大和ハウス工業の“総合力”は、環境にとどまらず社会課題全般へと射程を広げた先で、さらに真価を発揮するだろう。

写真提供:大和ハウス工業





