海外バイヤーを招いてデニム商談会を開催した|福山市

日本製デニム生地は独自の歴史の中で育まれてきたことをご存じだろうか。デニム生地の国内生産でシェア約8割を持つ広島県福山市。その起源は江戸時代にさかのぼる。

広島県東部の福山市周辺は、福山藩の初代藩主だった水野勝成が綿花の栽培を奨励したことから繊維産業が勃興し、地域の文化として定着した。

江戸時代後期には、現在の福山市を含む備後地方で「備後絣(がすり)」が誕生し、後に愛媛県の「伊予絣」、福岡県「久留米絣」とともに日本三大絣の産地として栄えた。

備後絣伝来の厚地の織り技術や藍染めの技術を引き継いで生まれた福山のデニムは、国内外の有名ファッションブランドから高い評価を得ている。デニム製造にかかわる事業者が多数集結し、紡績から染色、織布、縫製、洗い、販売まで地元で一貫して行えるのも特徴だ。

「備中備後デニム商品化コンテスト2021」で最優秀賞を受賞したデザイン画をデニム関連事業者の協力を得て製品化した | 福山市

しかし、「デニムの街」としての福山市の知名度は低い。デニム関連事業者が主に企業に製品を卸しているためで、自分が着用するデニムが実は福山産であることを知らない人は多い。

こうした状況を打開しようと、備中(岡山県西部)・備後地域のデニム関連事業者と行政が連携して2016年、国産デニムの産地を盛り上げるために活動する「備中備後ジャパンデニムプロジェクト」が発足した。

その取り組みのひとつが2021年にスタートした「備中備後デニム商品化コンテスト」だ。デニムを使う商品のデザイン画を募集し、商品化のチャンスを与えるという企画で、2022年は全国から303件の応募があった。2019年にはイタリアで開催された世界有数のテキスタイル展「ミラノ・ウニカ」にプロジェクトから数社が出展している。

デニム関連事業者の海外販路開拓にも力を入れる。福山市は2022年11月、海外バイヤー向けにデニム生産現場の視察ツアーと商談会を開催した。商談会では福山城の月見櫓などを会場として利用。同市産業振興課の冨永雄一郎課長は「バイヤーに当市の歴史を感じてもらう非日常的で記憶に残る体験を提供したかった」と話す。山陽新幹線の福山駅のすぐ北に立地し、ホームからその姿を間近に望める全国でもめずらしい福山城は、2022年に築城400年を迎えた。

11月は福山市職員の「デニム着用月間」でもあった。デニムの街をPRしようと、2016年から毎年11月、職員がデニム製品を着用して出社する。

これらの取り組みは功を奏しているようだ。福山市が首都圏に住む人を対象に行った調査では、同市を表す約20の説明文のうち「日本一のデニム産地」を選んだ人は2017年の9.1%から2021年は24.4%に増加した。

近年はデニム生地や製品の製造について学ぼうと、日本各地から福山市を訪れる若者も増えている。地元のデニム製品を売り込む活動は民間企業にも広がり、制服にデニム生地を使い始めた企業もあれば、デニムをテーマに客室の内装を作りこんだホテルもあるという。デニムを呼び物にしたイベントも開催されている。

冨永氏によると、地元企業の制服を回収してリサイクルし、新たなプロダクトへ再生するなど、環境に配慮した新しいアイデアが民間企業から次々と生まれている。こうした活動は、地元のデニム産業の振興と持続可能性の追求に同時に貢献しているという。時代のニーズに応え世界に羽ばたくデニム産地として、福山市は国内外から大きな期待を集めている。


福山市は、ジャパンタイムズと協力し、持続可能社会の実現に向けた日本の取り組みを発信する企業と自治体のグループ「Sustainable Japan Network」の会員です。ネットワークの活動詳細や入会問い合わせについては次のURLをご覧ください。
https://sustainable.japantimes.com/sjnetwork-jp

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