March 11, 2026
【セイノーHD】輸送効率化を後押し、「物流コンソーシアムbaton」が本格始動
Translator: Tomoko Kaichi

日本の物流業界は、深刻化する人手不足や環境問題への対応ニーズの高まりなど、差し迫った課題に直面している。経済産業省が2023年2月にまとめた報告書によると、何も対策を講じなかった場合、2030年には輸送能力が34.1%不足し、9億4,000万トン分に相当する物流が影響を受ける可能性があるという。
国土交通省は、日本の物流施策の中長期的方向性を示す「総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)」において、これらの課題に対応するための指針を策定している。サプライチェーンの最適化、人手不足対策、物流の構造改革、強靱で持続可能な物流ネットワークの構築についてまとめたもので、2021年6月に閣議決定された。
これらの指針に沿った具体策を加速させるため、セイノーホールディングス(HD)株式会社、東京海上HD株式会社など物流・保険業界の11法人は2024年11月、「物流コンソーシアムbaton(以下baton)」を設立した。セイノーHDは日本有数の物流事業者であり、「The Japan Times Sustainable Network」の長年のメンバーでもある。同コンソーシアムの主な目的は、「企業横断型中継輸送」を通じて各社がリソースを持ち寄り、活用を進めることにある。
batonの第一弾実証運行は期間2カ月で、2026年2月に開始。トラックは変えず、輸送の途中でドライバーが交替して貨物を運ぶ「ドライバー交替方式」を検証する。ドライバーの労働時間の短縮により、労働環境の改善と生産性の向上が期待される。
この実証に先立ち、batonでは参加する運送事業者が持つ約1万3,000便の運行データを集約・分析した。複数の物流事業者のデータを横断的に分析する試みは、日本国内で初となる。輸送ルート、積載率、運行時間帯、スケジュールなどを評価し、中継輸送によって効率化が見込める幹線ルートを選定した。さらに、事故が発生した場合の事業者間のリスク負担のあり方や、伝票の取り扱い、荷扱い方法など各社で異なるオペレーションの標準化についても議論を進めてきたという。

セイノーHDは岐阜県に本社を置き、90年以上にわたり物流事業に携わってきた。サステナビリティ分野でも業界をリードし、コンソーシアム発足以前から一部の幹線ルートで中継輸送を導入してきた。こうした経験に基づく知見は、batonにおいても運用上の課題を洗い出すうえで役立っている。
セイノーHDはこれまで、大型トラック2台分の荷物を一度に運ぶ「ダブル連結トラック」の導入、ディーゼル車から電動車への切り替え、省エネ運転に関するドライバー教育、再利用可能なパレットや梱包資材の採用など、二酸化炭素排出量の削減に向けたさまざまな施策を進めてきた。他の運送事業者と連携し、省エネや業務負荷の軽減も図っており、batonを通じ、相互に効率性を高める協力関係をさらに広げられるとみている。
最初の実証運行では、セイノーHD傘下の西濃運輸株式会社と福山通運株式会社が神奈川県藤沢市と大阪府堺市を結ぶルートで、また名鉄NX運輸株式会社とトナミ運輸株式会社が大阪府東大阪市と東京都葛西を結ぶルートで中継輸送を実施する。ドライバーが交替する中継拠点での車両の引き継ぎや貨物の取り扱い方法を検証するほか、中継拠点間のドライバーの移動、遅延などの不測の事態への対応、駐車スペース確保の必要性などについて評価する。

実証事業の終了後、batonでは検証結果を踏まえ、対象路線の拡大を検討する。また、中継輸送用の共通データベースの構築、事業者が使用するアプリケーションや複数の輸送サービスを組み合わせるアルゴリズムの開発を進める計画だ。
セイノーHDは、これまでの中継輸送に関する経験と知見を踏まえ、物流の効率化を本質的に実現するには、より多くの多様なステークホルダーの協力が不可欠だと考えている。円滑で安全な運行の実現、安全性の向上、中継拠点や運用全体を管理するシステムの整備・維持、ドライバーの健康管理や労務環境の改善といった課題に包括的に対応する枠組みを構築するには、各分野に強みを持つ企業を幅広く集める必要があり、batonでは参加企業の段階的な拡大を検討している。
物流事業者だけでなく、物流施設の運営・開発事業者、IT企業、ヘルスケアサービス事業者、リース会社などもこの取り組みに関心を示しており、今後の連携に向けた協議がすでに始まっている。





