April 12, 2023
セイノーHD、より速く、より環境に優しいECへ
日本にセイノーホールディングス株式会社（以下セイノーHD）がモノを届けられない場所はない。同社は90年の歴史を持つ日本有数の総合物流会社だ。自前のネットワークの整備が不十分な地域では他社と連携し、どこにでも確実に配送する。
セイノーHDは、「低コスト宅配が可能にする新サービスの提供」「ドローンによる効率的な物流の実現」「外出が難しい人への宅配買物サービスの提供」を3大柱とするラストワンマイル戦略を掲げる。
目指すのはドローンを活用して物流を効率化する「新スマート物流」（同社）と、それにより労働力不足、環境・エネルギー問題、デジタルトランスフォーメーションなど物流業界が抱える課題の解決に官民が協力して取り組むオープンプラットフォームの確立だ。
2021年1月、2017年創業のドローン開発のテクノロジー・スタートアップ、株式会社エアロネクストと提携した。両社が共同開発した「SkyHub」は既存の物流にドローン物流を統合したスマート物流サービスで、生産と在庫管理、配送の最適化と自動化を進め、日本全国、特に僻地への配送効率を改善する。
SkyHubでは、セイノーHDが店舗や倉庫から預かった荷物を集積・配送拠点に運び、そこから目的地までをドローンでカバーする。受注から配送まで、荷物の動きはすべて専用システムで追跡する。
開発の背景には、社会の高齢化や地方の過疎化、買物の選択肢や交通手段の不足、医療サービスや災害対策といった社会課題と、成長を続けるECなどビジネスチャンスへの期待があった。SkyHubのようなシステムの導入は、より速く、より便利にモノを届けるだけでなく、社会課題の緩和や解決、そして人々のニーズの充足に貢献する。
両社はSkyHubの最初の試験運用地に山梨県東部の小菅村を選んだ。6カ月の試験期間中、住民715人の村で190回のドローン配送を実施。買物代行・配送サービスの利用は375回にのぼった。
この試験を経て2021年11月、両社は小菅村で2つのサービスを正式にスタートした。ひとつ目はアプリベース・コンビニの「SkyHub Store」。「ドローンデポ」と呼ばれるドローン配送拠点に食料品や日用品を保管しておき、アプリ経由で注文を受けて配送する。もうひとつは、地域の商店やスーパー、飲食店の商品や食べ物をドローンで配送する買物代行・配送代行サービスの「SkyHub Delivery」だ。
これまで15以上の自治体で試験運用を行い、SkyHubはすでに小菅村を含む3地域で運用されている。
過疎化や高齢化といった地方に共通の課題に加え、各自治体は独自の課題も抱える。北海道中央部の上士幌町では、物流側の人出不足対策として、牛の乳房炎の検体を酪農家から検査施設に配送する実験を行った。
トラックを利用する現状の運搬は通常2日以上を要するが、ドローンの併用で検体採取の翌日に検査が可能になり、検体の品質も維持されていたという。
ドローンの活用は、環境に優しい配送サービスの実現に欠かせない選択肢のひとつでもある。一連の実験の結果、ドローン導入により、自治体あたり年平均11.6トンの二酸化炭素排出量削減が見込まれている。
国土交通省は2022年12月5日、目視での追跡が不可能な有人地帯でのドローンの無人飛行を解禁した。今後は生活のさまざまな場面でドローン活用の加速に期待がかかる。
新型コロナウイルスの世界的大流行をきっかけに、人々のライフスタイルは変化した。セイノーHDは、非対面サービスの需要が高まりECが成長した都市部にSkyHubモデル応用の新たな可能性があるとみている。
セイノーHDは、ジャパンタイムズと協力して持続可能社会実現に向けた日本の取り組みを発信する企業と自治体のグループ「Sustainable Japan Network」の会員です。ネットワークの活動詳細や入会問い合わせについては次のＵＲＬをご覧ください。
https://sustainable.japantimes.com/sjnetwork-jp
