April 26, 2024
文化財と現代建築が融合した宿泊施設。
伊豆半島の付け根にある静岡県の沼津は、眼の前に美しい富士山を望む海辺の街である。この地はかつて天皇家の別荘である御用邸があった場所としても知られ、今回紹介する<沼津倶楽部>も元々は、実業家であるミツワ石鹸の三輪善兵衛が1913年に建てた別荘だった。第二次大戦末期にはこの沼津の地は空襲にあったが(御用邸は被災)、沼津倶楽部は奇跡的に戦禍を逃れた。戦後すぐの占領下ではGHQに接収された時期もあったが、2008年に宿泊棟を新たに新設し、わずか8室のみという隠れ家ホテルとして開業したという歴史を持つ。
この施設で登録有形文化財になっているのは3つ。<沼津倶楽部>のエントランスにある長屋門と、現在はモダンチャイニーズレストランが入る数寄屋造りの日本家屋「北棟」、そして宿泊者専用ラウンジなどを擁す「南棟」だ。この施設滞在のメリットは、快適性が求められる客室やSPAなどはモダンな現代建築内で、食事やお酒を飲んだりする、ある意味パブリックで華やかな振る舞いの場は、文化財に登録されている贅を尽くした数寄屋建築内で味わえるという点だろう。
数寄屋建築内には、日本の伝統技術の粋を集めて作られた数々の茶室もあり、そこから眺める日本庭園も実に素晴らしい。一度は泊まってみたい宿だ。
沼津倶楽部
静岡縁沼津市千本郷林1907-8
TEL:055-954-6611
https://numazu-club.com/