October 06, 2026
【村田機械】自動化技術のさらなる進化で、サステナビリティへの貢献を目指す

自動化技術を事業の柱とする村田機械は、人工知能(AI)の普及で半導体需要が拡大し、世界各地で大規模なデータセンター建設が相次ぐ今、持続可能な社会の実現に貢献している。
データセンターの急増で電力需要が膨らむなか、「ムラテック」のブランドで知られる村田機械は、半導体産業をはじめとする幅広い分野の生産効率を高め、消費電力と環境負荷の低減を後押ししている。自動化は、繊維機械、ロジスティクスシステム/ファクトリーオートメーション(FA)システム、クリーンFA、工作機械、情報機器という同社の5つの主要事業すべてを貫く中核技術だ。
「今や、非常に少ない機械台数で昔と同じ量の生産ができます。これが私たちの目指す環境配慮なのです」。村田機械の村田大介社長は、経営共創基盤(IGPI)の木村尚敬パートナーとのインタビューの中でこう述べた。
オーダーメイドの自動化を提供
半導体工場や物流現場の自動化・高効率化は、世界的な課題である電力消費の抑制に直結する。ムラテックは、工場内の自動保管・搬送システムなどを通じて製造工程を効率化するほか、食品、医薬品、化学、自動車部品など広範囲な業種向けにオーダーメイドの物流システムを構築している。
村田氏は、繊維機械メーカーとして出発したムラテックは、自動化をはじめとした繊維産業の変革を取り込みながら、時代とともに成長してきたと説明する。「繊維事業で創業してから長年、自動化と省力化に取り組んできました」
同社は1935年、ジャカード機の製造販売会社として創業した。京都で16世紀ごろに生まれ、長く上流階級に愛好されてきた高級絹織物「西陣織」の生産を支えた。
手織りから始まった繊維産業は、産業革命を機に大きく変貌し、生産効率を飛躍的に高めた。当初は糸をつなぐ工程に人手が欠かせなかったが、現在ではこの作業も自動化されている。今や企業の連結売上高は5,208億円に達し、25の国と地域に8,890名の従業員を擁している。
「生産性を上げ、環境に役立つ流れは変わりません。ただ、生産性のみを追求する従来の考え方は見直されていくでしょう。今後は、環境負荷を抑え、資源の使用量を減らす生産へと移行していくと思います」
こうした流れを受け、自動化の重要性は一段と高まっている。環境意識の高い消費者を抱える欧米のアパレルブランドが、取引先のメーカーに対応を求めていることも背景にある。米国のアウトドア衣料大手パタゴニアやザ・ノース・フェイスもその一例だ。「メーカーには、環境負荷の小さい生産方式への転換が、これまで以上に求められるようになるでしょう」と村田氏はみる。
温室効果ガスの削減にも寄与
環境関連でムラテックが力を入れるのが、国際ルールである温室効果ガス(GHG)プロトコルで定義される「スコープ3」のうち、「カテゴリー11」に該当するGHG排出量の削減だ。カテゴリー11は、企業が販売した製品やサービスの使用に伴い、バリューチェーンの下流で発生する排出を指す。
「当社は製品を組み立てる企業なので、熱の使用や排出は多いわけではありません。このため、スコープ1(直接排出)とスコープ2(電力使用などに伴う間接排出)の絶対量は大きくありません。一方、顧客は製品の使用時に電力を消費し、場合によっては熱も発生させます。こうした課題への対応は、当社の本業と整合します」。同社はこの方針を重要業績評価指標(KPI)に反映することで、事業目標としてカテゴリー11の排出削減への貢献を目指している。
もっとも、自動化が幅広い産業に浸透し、世界的な競争が激しくなるなか、自動化技術だけで優位性を保つのは難しい。村田氏によると、欧州メーカーが製品デザインに強みを持つ一方、ムラテックは導入後のサービスと使いやすさを競争力の源泉としている。
例えば、ムラテック製品は部品を交換しやすく、操作画面のユーザビリティも高い。欧州メーカーの製品より高さを抑え、アジア人の体形に合わせた設計をしている。

「変化と成長」を目指す
人的資本の活用に向け、社員の自律的なキャリア形成を促す独自の人事制度も導入している。「キャリアディスカバリーシステム」では、社内の業務を約100区分に整理し、社員が年1回、希望する職場に応募できる。各部門長が作成した職務説明書を全社員に公開しており、昨年度は約50名が応募し20名が新たな部門に異動した。
「この制度の利点は、部門長が成果の追求だけでなく、部員のスキルをどう伸ばし、キャリア形成をどう支援するかまで考えるようになることです。社員が前向きに競い合い、社内の人材流動化が高まる仕組みにしたかったのです」。村田氏は、制度の出発点には社員の離職防止があったと明かす。取り組みは一定の成果を上げており、社員の平均勤続年数は16.5年に達する。
制度の最終的な狙いは、異動を通じて社員の創造性を引き出し、製品開発につながる新たな発想を生み出すことにある。
インタビューの締めくくりに、村田氏は創業100年にあたる2035年に向けた中長期ビジョンのテーマとして「変化と成長」を挙げた。
課題の一つは、従業員の年齢構成を改善し、次世代の経営人材を指名し、世代交代を進めることで、持続的に成長できる組織を築くことだという。
もう一つは新製品の開発だ。「環境や資源を軸とした新たなものづくりに取り組み、さらに進化させたいと考えています」。現在開発中の繊維機械の製品の一つに、糸を巻き終えても停止する必要がない自動ワインダーがある。エネルギー効率とパッケージ品質を大幅に高められるという。
「単に省エネ型モーターを採用することにとどまらず、新たな発想からイノベーションを生み出し、製品の進化につなげていきたいと思います」と村田氏は語った。

Naonori Kimura
Industrial Growth Platform Inc. (IGPI) Partner

変化の時代に、ものづくりの軸をつくる
村田機械の原点である繊維機械の歴史は、まさに「自動化」の歴史でもある。人が担ってきた作業を機械に置き換え、生産性を高めることは、同時に人手やエネルギー、材料の使用を減らすことでもあった。このDNAは半導体搬送や物流、工作機械など多様な事業にも受け継がれ、現在では単なる省力化にとどまらず、工程そのものを短縮し、無駄な搬送やエネルギー消費をなくすなど、顧客のものづくり全体を変革する力へと進化している。環境負荷低減への要求が世界的に高まる中、QCDに加えて「より少ない資源で同じ価値を生み出す」ことが新たな競争力となるという村田氏の言葉が印象的であった。
一方、自動化が進むほど、人が担う仕事や働く意味も改めて問われる。同社は「人に優しいテクノロジー」という思想を大切にするとともに、社内公募制度や年齢にとらわれない人材活用を通じ、社員自身の挑戦と成長を後押しする。2035年の創業100周年に向けて掲げる「変化と成長」の「成長」は、単なる規模拡大を意味するGrowthではなく、質的な進化を意味するEvolveである。技術、事業、人、組織を共に変化させながら、ものづくりを通じて社会の持続可能性に貢献する同社の次なる進化に期待したい。





