May 26, 2026
ガストロノミーによる、新たな日本の輪郭を浮き彫りにしていくレストランリスト。
2021年にスタートした「Destination Restaurants」も、今年2026年で6回目を迎えた。毎年10軒ずつリストアップされていく日本の地方レストラン数は、今年で60軒となった。
日本の国の面積自体は世界第61位とそれほど大きくはないが、海岸線の長さは約35,000kmあり世界第6位である。国土の7割は森林が覆い、南北に長細い形状をしている。ゆえに、地域により気候や景観などが著しく異なり、そこから生まれた生活文化、風習、そこに暮らす人々の考え方など、バラエティーに富んだ風土を持っているのだ。当然、各地域の食文化もそれぞれ特色がある。そんな日本の地方レストランに特化したこのレストランリストは、セレクションされた店を日本地図にポイントしていくと、ガストロノミーによる新たな日本の輪郭が浮かびあがってくる。
この「Destination Restaurants」の取り組みはそもそも、海外の評価機関を母体にしたレストランガイドやランキングではなく、日本の風土を反映させた、日本人が選ぶ、日本発信のレストラン・セレクションをできないか、という考えから生まれたものだ。選考の前提条件は「東京23区と政令指定都市を対象から外すこと」としている。それはなぜかといえば、「日本の食文化の特徴・特色は、都市部ではなく地方にある」と考え、「地方に埋もれがちな食の担い手の才能の発掘に寄与する」、「既存のレストランガイドやセレクションとの差別化を図る」ことを意図したからだ。
過疎地であっても、魅力あるレストランが1軒でもあれば、人はその地を訪れる。それによって得られる経済効果も年々、増加している。現在、食を通じて、その土地の文化や歴史に触れるガストロノミー・ツーリズムは、世界全体の市場規模が100兆円と目されており、日本でも地方のガストロノミーレストランや「Destination Restaurants」という賞自体への注目度も高まっている。
東京は世界一ミシュランガイドの星付きレストランの数が多い都市と言われ、東京を筆頭に日本の大都市には優れた店がたくさんある。だがもうひとつ注目して欲しいのが日本の地方にあるレストランの数々だ。日本の食の奥深さや面白さは、素材や調理方法、店の形態などのオリジナリティーを含め、「Destination Restaurants」にあると言って過言ではない。このレストランリストを片手に、海外の人にも日本人にも、日本の地方の食文化の豊かさと楽しさを体験して欲しい。
Destination Restaurantsとは?
1897年に創刊された日本最古の英字新聞『ジャパンタイムズ』が、日本の地方に点在する、訪れる価値のあるレストランを、毎年10軒を選び発表するレストランリスト。2021年からスタートし、審査員は第1回目より、辻芳樹、本田直之、浜田岳文の3氏が務める。選考対象となるのは、東京23区と政令指定都市を除く、日本国内にある、あらゆるジャンルのレストランだ。
Destination Restaurants 2026
A: 炉ばたとワイン K

北海道釧路市米町2-9-16
Tel:0154-45-1338
https://sunset.winek.jp
海に沈む夕日を眺めながらのディナーが話題の店。道東の豊かな自然が育んだ食材を用いた、フレンチベースの炉端焼き料理を提供する。釧路市で生まれ、東京のフランス料理店や釧路市内の鮮魚店で独自の料理観を培った店主、今秀雄厳選のワインペアリングを楽しめる。
B: 気仙沼 KUROMORI

宮城県気仙沼市弁天町1-4-7ホテル一景閣1F
Tel:0226-22-0602
https://kesennuma-kuromori.jp
シェフ、黒森洋司は2011年に起こった東日本大震災をきっかけに宮城県に移住。仙台でフカヒレ専門店を開き、腕を振るってきたが、2025年、世界的フカヒレ産地である気仙沼に店を移転オープン。生産者と協力しながらフカヒレ料理を提供している。
C: 山形座瀧波 Ukitomam

山形県南陽市赤湯3005
Tel:0238-43-6111
https://yamagata-the-takinami.com
1915年、山形県の置賜盆地に創業した温泉宿『山形座 瀧波』が2017年、リニューアルオープン。シェフ、中川強が腕を振るう館内のレストラン『ウキタム』は「山形のショールーム・セレクトショップ」を標榜し、地元の食材の魅力を国内外に発信している。
D: Ohtsu

茨城県水戸市白梅1-5-4
Tel:029-226-8502
1991年、オーナーシェフ大津高志により創業。近年は若手シェフの登竜門となっているコンテスト「RED U-35(2022年)」を受賞した息子・高彬がスーシェフとして存在感を増している。クラシックなスタイルのフランス料理をベースに地元食材を巧みに使いこなしている。
E: mano

長野県北佐久郡軽井沢町発地553-3
https://www.instagram.com/mano_karuizawa/
オーナーシェフ、西本竜一は幼少期から薪火に親しみ、スペインからの帰国後はキャンプ場の運営や薪の製造・販売も手掛け、薪のスペシャリストとして食材を薪火で調理する。また、北アルプスの山でキノコや山菜を採取し、山の料理で注目を浴びる。
F: nôtori

山梨県南都留郡忍野村忍草3192-8
https://notori-fuji.com
シェフである弟・堀内浩平とソムリエの兄・茂一郎がそれぞれ国内外のレストランで経験を積み、2024年夏に故郷で創業。富士山の北側にある、森に囲まれたオーベルジュのダイニングは9席のカウンターのみ。ヴィーガン・コースも用意している。
G: TSUKIHI

福井県越前市葛岡町8-10-1
Tel: 0778-24-0318
https://hp.restaurant-tsukihi.jp
2025年2月、福井県越前市にある『シックス スリー エステイト』ワイナリー併設のレストランとしてオープン。長屋恭平は同ワイナリーでブドウ栽培やワイン醸造を学び、同店シェフに就任。地元の食材と工芸品を用い、越前の美意識を伝えている。
H: RUKAWA

滋賀県高島市今津町浜分590
Tel: 0740-20-1351
https://rukawa-shiga.com
オーナーシェフ、古川満が生まれ育った築100年以上の古民家をリノベーションし、2024年6月にサウナ付き割烹オーベルジュを開業。日本料理をベースに、狩猟免許をもつシェフ自らが獲ったジビエや琵琶湖の魚などを独自スタイルのコースに仕上げる。
I: SÉN

奈良県吉野郡天川村川合267
Tel: 050-1721-9991
https://sen-tenkawa.com
世界遺産の一角にある奈良県吉野郡天川村にある『せせらぎの宿 弥仙館』の中に、2025年にオープンしたレストラン。シェフ、砂山利治は熊野川流域というテロワールを生かした料理を紡ぎ出している。
J: Restaurant Présage

佐賀県唐津市新興町17
Tel:090-4004-8844
https://birds-planning.com/presage/
フランスの名店で腕を磨き、NY郊外にある『Blue Hill at stone barns』でシェフを務めた横田悠一が、2024年5月にオーナーシェフとして独立。「料理とは、食べるとは、土地を表現するとは」と問いかけながら、新たな境地を開いている。





