August 28, 2026
【TSUKIHI】越前市のテロワールを、薪焼きで描くシェフ。

PHOTOS: TAKAO OHTA
2024年3月、北陸新幹線が福井・敦賀まで延伸したのをきっかけに、福井県内の観光シーンは盛り上がっている。だが、2025年の宿泊客数に占めるインバウンドの割合は、全国27.2%に対して県内は2.9%と限定的で、インバウンド獲得が今後の課題だ(国土交通省観光庁「宿泊旅行統計調査」)。そんな折、越前市『TSUKIHI(ツキヒ)』では本誌が主催するレストラン・アワード「Destination Restaurants」受賞後、以前はなかった海外のゲストからの予約が入るようになったという。こちらは2023年1月、北陸新幹線・越前たけふ駅から徒歩15分の場所に開業した自然派ワイナリー『シックス スリーエステイト』併設のレストランで、2025年2月にオープンした。


シェフ、長屋恭平は岐阜県で生まれ、イタリアや国内外のレストランで修業を積んできた。縁もゆかりもない福井県越前市で腕を振るうことに、なんのためらいもなかったという。
「ずっと都市部で働いてきましたが、もっとそのときの季節を感じながら料理を作りたいと思ったんです。都会のレストランがシェフの個性を出すところだとしたら、地方は土地の個性があり、そこに身を委ねたい」と長屋は語る。

長屋は2024年1月にこの地に移住し、『TSUKIHI』の開業準備のかたわら、ワイナリーでブドウ栽培や醸造を学びつつ、福井県の食材を探し、食文化に触れてきた。昼夜ともに¥22,000のコースでは、長屋の目を通した福井県の食文化を表現する。まず、地元の米のおこげやブドウの新芽で香りをつけた湧水が出される。カウンター8席、テーブル12席、そして個室からも見える美しい山、日野山の雪解け水を源流とする水をひと口飲むだけでも、この地の清々しさ、豊かさが感じられる。


福井県 (イノベーティブ) TSUKIHI
福井県越前市葛岡町8-10-1 Tel: 0778-24-0318
https://hp.restaurant-tsukihi.jp
建設会社の資材置き場を利用した店内にガスは通っていない。薪でお湯を沸かし、米を炊き、熾火の遠赤外線で焼き上げる。串を打って焼いたスズキは皮はパリパリ、身は弾力がある状態でやってくる。コースには昆布やウニ、そば、蟹など福井県を代表する食材が盛り込まれるほか、ビーツの「越前粘土包焼」に添えられたお麩の芥子和えのように、仏教への信心が深い地域ならではの精進料理も添えられる。他府県出身シェフゆえの “福井県のテロワール”を表現した料理は、地元にとっても大きな刺激になるだろう。

長屋恭平(ながや きょうへい)
1985年岐阜県生まれ。18歳で食の道へ進む。イタリアや国内のレストランで腕を磨き、2017年からシェフを務めた神戸市『エッレ』で薪焼きと出会う。2024年1月、福井県越前市に移住。2025年2月、ワイナリー『シックス スリーエステイト』併設のレストラン『TSUKIHI』オープンとともにシェフ就任。






