February 03, 2026
【アルテミラ】世界的なアルミ缶へのシフトで需要拡大を見込む

近年、プラスチックが環境に及ぼす影響についての関心が世界的に高まっているが、日本ではこの問題はあまり深刻に捉えられていないように見える。しかし、だからこそ日本市場にはアルミ缶などの代替容器にとって大きな可能性があるかもしれない。
「今や世界的なトレンドになっている“PET to CAN(ペットボトルからアルミ缶へのシフト)” が日本でも起これば、アルミニウムの需要は高まると考えている」と、アルテミラ・ホールディングスの社長兼グループCEOである中塚晃章氏は、経営共創基盤(IGPI)の木村尚敬パートナーとのインタビューの中で述べた。アルテミラグループは、アルミ缶製造や圧延、箔、押出などアルミ製品事業を専業とする総合アルミニウムグループである。
日本では、ペットボトルとアルミ缶はほぼ同等に使用されている。国内では約250億本のペットボトルが製造されており、アルミ缶は200億缶、残りの50億缶はスチール缶だ。「日本の状況は非常に特殊だ」と中塚氏は述べる。
中塚氏は、日本人がペットボトルを好む理由として、プラスチックがおよぼす環境への影響について一般的にまだ理解が充分ではないことを指摘する。さらに、多くの消費者がペットボトルを分別するだけで、環境への影響が軽減されると感じていると話す。
ペットボトルの使用が広まっているもう一つの理由は、大手飲料メーカーが自社でペットボトルを製造しているという事情もあると中塚氏は指摘する。
世界的には人々が、海に流れ込むプラスチックごみが海洋生物を脅かし、人間がマイクロプラスチックに曝露することで健康問題につながる可能性があることを学ぶにつれ、各国はプラスチック容器の使用制限に動いている。
現在、世界全体のプラスチック廃棄物のうち、広くリサイクルされているのはわずか9%と考えられている。残りは焼却されたり、埋め立てられたり、捨てられて水路や海に流れ込む可能性がある。
中塚氏は、「欧州や米国ではすでにペットボトルからアルミ缶への切り替えが始まっている」と述べた。これらの地域でのビジネス会議では、出席者にペットボトルではなく、缶や紙コップで水が提供されるようになったという。
最近の象徴的な動きの一つは、世界的なプラスチック汚染危機への取り組みの一環として2024年パリオリンピックで使い捨てプラスチック飲料が禁止されたことだ。来場者は自分の飲料ボトルに水道水を入れ、一方で、アメリカの飲料大手でパリ五輪の公式スポンサーであるコカ・コーラは、デポジット制で返却専用ブースを設置しつつプラスチックのカップで飲料を提供した。

海やその他の場所でのプラスチックごみの現実は、地方自治体が企業に対して法的措置を取るまでに至っている。米国では、コカ・コーラとペプシコが、飲料メーカーがプラスチックリサイクルに関する役割について消費者を誤解させたとして地方自治体から訴訟を受けた。一方、カリフォルニア州は2024年、石油大手エクソンモービルを、プラスチックリサイクルの有効性について人々を欺いたとして提訴した。
専門家によると、プラスチックはリサイクルの過程で劣化をし、ペットボトルは2~3回程度しか新たな容器に再生できないという。しかし、ガラスやアルミニウムは、液化されるために何度でも新しい容器に再生できる。「ライフサイクルを考えれば、アルミニウムは環境への影響がはるかに少ない」と中塚氏は述べる。
日本がリサイクルへの理解を深めることへの期待に加え、効率性に関して改善の余地があったアルミニウム業界の再編によって、日本のアルミニウム市場の潜在性は高まっている。
アルテミラは2022年7月に設立された。米国のプライベートエクイティ投資会社アポロ・グローバル・マネジメント社の主導で、昭和アルミニウム缶がアルテミラに、ユニバーサル製缶がアルテミラ製缶に社名変更し、グループのベトナム拠点であるHanacans Joint Stock Co.、アルミ圧延・箔・押出事業の堺アルミ、MAアルミニウムと共に総合アルミニウムグループとして統合された。
アポロは、再編によって新しいアルミニウムグループが価格交渉力を強めることを期待した。米国飲料缶大手ボール社やクラウン社とは違い、価格交渉力が弱かったからだ。日本のアルミ缶メーカーは、これまで飲料メーカーより価格決定力が弱く、長期にわたるデフレ傾向の中で価格を上げることができなかった。
「デフレの時代に業界では価格転嫁が進まなかったが、ようやく価格転嫁の動きが出てきた」と中塚氏は述べる。新グループは調達面でもシナジーがあったという。
新会社設立時にまず重視したのは、企業理念の策定だった。「五つの会社が統合するグループなので、まずはパーパス(企業理念)を作ることから始めた」と中塚氏は語る。その理念は「アルミの技術で夢のアルミライを」だ。
新しい社名をつくることも中塚氏にとって重要だった。アルテミラという名前は、「アル」がaluminumから、「テ」がtechnologyから、そして「ミラ」が日本語で「未来」を意味するmiraiから来ており、5社が「アルミニウムで明るい未来を目指す」という強い思いを込めている。
同社のウェブサイトには、「今後は各社に蓄積されている開発力、技術力、知見を総動員しグループ一丸となってお客様と夢のある未来を切り拓いていきます」と記載されている。
新会社設立に伴い、人事制度も刷新していく。主な改革として、従来の年功序列制度を廃止し、ジョブ型を中心としたグローバル標準の人事制度を導入しているところである。
中塚氏は、海外でのさらなるビジネスチャンスも見込んでいる。「ベトナムでは当社の技術が足場を築いた。今後も機会があれば、同様の市場を見つけたいと考えている」と語った。





