October 15, 2026
【みずほFG】顧客とともに未来を共創する銀行

Mizuho’s strong points
1.サステナブルファイナンス目標を100兆円へ増額、51兆円を実行
2.高排出企業を切り離さず、「対話」と「目利き力」でトランジションを支援
3.独自の「削減貢献量」「自然資本経営」指標を開発、脱炭素以外にも拡張
4.金融の役割を超え、異業種をつないで循環型産業の形成を後押し
2023年4月、国内3大メガバンクの一角である、みずほフィナンシャルグループ(みずほFG)から注目すべき発表があった。2019〜30年度の「サステナブルファイナンス」の累計目標額を、従来の25兆円から4倍規模の100兆円へと引き上げるというもの。
12年間の累計とはいえ、2025年度の日本政府の一般会計当初予算に迫る規模感。実績も伴う。2025年度までの累計実行額は51兆円(うち環境・気候変動対応28.4兆円)で、目標の半分に達した。
「この銀行は未来の形を具体的につくろうとしている。お金の融通だけじゃなく、お客様と一緒に未来を共創するという思いが非常に大きいと実感しています」
国際協力銀行を経て、国際協力機構(JICA)で最高サステナビリティ責任者(CSO)等を歴任したのち、2025年4月、みずほFG常務執行役員・グループ副チーフサステナビリティオフィサー(CSuO)に就いた武藤めぐみ氏は、こう話す。
これは「金融」に閉じた話ではない。みずほには、日本の産業構造そのものの変革を後押しする意志がある。100兆円は、その入口に過ぎない。
高排出企業の「トランジション」を支える
2021年3月、みずほ銀行が中心となり、当時、日本初となる「トランジション・ローン」約59億円を川崎汽船に実行した。同ローンは、脱炭素化・低炭素化への移行の取り組みを資金使途とするもの。LNG燃料自動車専用船を対象とした。
さらに同年9月、脱炭素目標の達成状況を金利等の条件に連動させる日本初の「トランジション・リンク・ローン」も、みずほ銀行がアレンジャーとして主導し、川崎汽船と締結した。
これらの枠組み設計を支援したみずほ銀行は、その後もJFEホールディングスなど重厚長大企業へのトランジション支援を重ねてきた。いずれも、「100兆円」の一部。みずほはなぜ、“高排出”セクターの「トランジション」を支え続けるのか。
「お客様の長期的な事業継続に関わるからです。お客様の存続は、自分たちの存続にもつながっています」。そう武藤氏は話す。
もちろん重厚長大になるほど、トランジションは困難であり、ファイナンスするみずほにもリスクが伴う。だからこそ、みずほは「エンゲージメント(対話)」を重視してきたと武藤氏は言う。
「お客様と将来のありたい姿を描き、そこからバックキャストしてどんな投資やガバナンス改革が必要かを一緒に考える。私が国際協力の仕事で携わった開発金融と似ている部分が多いと感じています」
2024、25年度ともScope3目標設定セクターの重点先約100社と対話し、移行リスクセクター約550社の対応状況を確認。電力会社とは電源構成や設備投資、鉄鋼会社とは製造プロセスや原料調達まで踏み込んでいる。
この対話中心のアプローチに加え、みずほには“武器”がある。産業調査の知見を総動員した「目利き力」と「ものさし」だ。
「産業調査を、深掘りするのが伝統です」と武藤氏。金融の前に、産業そのものを調べ尽くす。その蓄積が、新しい技術や企業を評価する目利きとなり、さらに独自の評価軸づくりにもつながる。
支えてきたのが、銀行の産業調査部と旧みずほリサーチ&テクノロジーズ(R&T)。旧R&Tは2026年4月にみずほ銀行へ統合され、その知見を顧客と向き合う最前線で生かす体制を強めた。
既存企業のトランジションのため、必要な技術の発掘・支援にも余念がない。
2022年、みずほ銀行はシード段階の脱炭素技術を対象に、10年間で500億円超を視野に入れた「トランジション出資枠」を設定した。第1号は神戸大学発のDNA合成技術ベンチャー、シンプロジェンへの3億円出資。既存企業を変えるだけでなく、その移行に必要な技術そのものも育てようとしている。貢献の“捉え方”も拡大し始めた。
生産増によって企業のGHG排出量が増えても、その製品の利用や普及によって、社会全体の削減量がそれを上回ることもある。そこでみずほは、社会全体で回避されたGHG排出量を評価する「Avoided Emissions(削減貢献量)」という指標も活用し始めた。
その象徴が、削減貢献量を組み入れたファイナンス商品として国内初となる「Mizuho削減貢献量インパクトファイナンス」。2025年10月に取扱が開始され、すでに水素関連や環境配慮型技術に取り組む川崎重工業や、再生可能エネルギー事業を拡大する電気機器メーカー、明電舎などへの融資を実行済みだ。
全方位で脱炭素に挑むみずほ。それだけではなく、みずほがつくる「ものさし」は、脱炭素の外へも広がり始めている。

産業・社会の変化の「触媒」となるファイナンス

「排出を減らす」緩和だけでなく、猛暑や水害など顕在化する気候リスクへの「適応」にも金融対象を広げているほか、「自然資本」にも目が向き始めた。
自然資本は水、生物多様性、土地、生態系などが複雑に絡む。貢献の判断が難しいが、みずほは2025年2月、独自の評価手法を用いた「Mizuho 自然資本インパクトファイナンス」を開始した。
TNFD等の国際的な枠組みを参考に評価手法を開発。ネイチャーポジティブ(自然資本の回復)に向けた経営姿勢を評価・融資するファイナンス商品で、すでに5件に適用した。中でも象徴的なのが王子ホールディングス(HD)への融資だ。
2025年3月、みずほ銀行がアレンジャーとなり、王子HD向けに国内23金融機関が参加する340億円の協調融資を実行。独自の自然資本経営に関する評価をシンジケーションへと広げた。
みずほが“つなぐ”のは、金融機関だけではない。
みずほ銀行を中心とする8社は2026年3月、プラスチックのケミカルリサイクルチェーン構築に向けた共同研究を実施したと発表した。自動車関連産業が集積する九州で回収したプラスチック廃棄物を域内で再生し、自動車製造への供給を目指す。
ここには豊田通商、日産トレーディング、ホンダトレーディングという自動車大手3グループの商社も参画している。「同じ業界の中ではなかなか調整できない。でも銀行が中に入ると、みんなでやろうという機運になる」(武藤氏)。
翌4月には、石坂グループなど3社と、九州の半導体産業から出る廃プラスチックを自動車部品へと再資源化する「X to Car」の共同研究も開始した。多くがサーマルリサイクル、焼却、埋立に依存していた半導体由来の高品質な廃プラを、自動車用途へマテリアルリサイクルするサプライチェーンの構築を目指している。
いずれも欧州の環境規制等の強化を見据えた動きで、みずほが企画・推進役を担うオーガナイザーを務め、資源循環の川上と川下、地域、競合企業をつなぐ。それができるのは、前述した長年の産業知見や目利き力、そして広い顧客基盤があるからにほかならない。
もはや金融機関の領域を超え、産業、ひいては社会全体の変革を伴走し始めた。みずほ銀行サステナブルビジネス部でディレクターを務める小山剛幸氏は、「議論をしていると、いつの間にか主語が『国全体』になっている」と明かすと、武藤氏はこうつないだ。
「私も政府系の仕事から移ってきてだいぶ景色が変わるんだろうなと思っていたら、重なるところが多い。日本だけでなく、他地域でも同じ目線を育てようとしています」
企業の移行を支え、技術を育て、異なる産業をつなぐ。100兆円は、そのための手段。みずほは「ともに挑む。ともに実る。」の目線で産業、社会、ひいては国全体を見つめ続けている。





